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「自分を犠牲にしてまで他人を守ろうとするよな」
「それは、心底尊敬する。けどな」
「その身を挺することが俺らにとってはもどかしい」
次々に飛び交う言葉を黙って受け取る。
「だから、皆で決めたんだ」
朗らかに、華やかに二人は笑った。
「「一緒に戦うって」」
「お前ら」
恐らく複雑に歪んだ顔をしているだろう俺に、二人は揃ってニヤリと笑む。あぁ、凄く嫌な予感がする。こういう時は勘はよく当たるもので。
「望月が何を言っても今度からは助けるからな」
「俺らも参戦する」
ただ呆然と見つめるが、二人の目に決意の色がハッキリと見えて溜息を吐いた。きっと俺がどう言おうと気持ちは揺らぐことはないのだろう。クラス全員と言うならば、本当に全員の気持ちが固まっているのだろう。それこそ立花先生に止めてほしかった。
「溜息吐くなよ」
「俺らなりに考えた結果だからちゃんと受け取ってほしい」
二人を見上げて苦笑する。もうここまで来たのなら仕方がない。
「分かったよ。巻き込んでやるから覚悟しとけ」
俺がそう言った途端二人共力強くガッツポーズした。いや、ちょっと待て。その反応は可笑しくないか?
「俺らさ、望月の説得係だったんだよ」
「任務完了!」
「お前らなあ」
呆れて物も言えない俺にニヤリと得意げに笑う様のなんと憎らしいことか。
「機会があったら誰でもいいから説得しようってことになってさ」
「流石に緊張したな」
丁度教室に着きドアを開けると全員が一斉にこっちを向いた。それぞれ不安そうな顔で見てきて戸惑っていると、後ろにいた二人が前に出た。
「「説得成功!」」
「「「「「「「おっしゃああああああ!!!」」」」」」」
「あー」
こういうことか、とまた苦笑した。今日の一時間目は立花先生が担当だったらしく、教卓に目を向けるとニヤニヤした表情にかち当たる。
この人も協力者か。厳を見やると、厳までもが一緒になってニコニコと笑っている。ああ、俺に味方はいないんだな、と自覚せざるを得なかった。別の意味で味方は増えたのだが。
クラスの異様な盛り上がりを見て、笑う。こんな俺でも心配してくれる人はたくさんいるのだと。そう思うと、どこか心が軽くなったような、そんな気がした。
「良い奴らだな」
授業になりそうもないクラスに苦笑と嬉しさがこみ上げる。自然と笑んで、俺もクラスの輪へと入っていった。
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