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「ナイスネーミングセンスだろ?」
名付け親らしいクラスメイトの一人が胸を張って言い放った。ってかもう無理だ!
「っあはははは!!」
「本当にナイスなんだけど!!」
ちなみに上が俺で下が厳な。厳もほぼ素に戻ってるし。
「だろ?俺を褒めろ」
「何でそんなに自信満々!?」
「アホだろお前っ!」
厳と馬鹿笑いしていると、つられたのかクラスメイトもクスクス笑い出した。そうして暫く経つとクラス全体が笑いに包まれた。そこにタイミング良く。
「お前ら何してんだ?」
呆れたような、しかし心底不思議そうに立花先生が聞いてきた。
「いや実は」
笑いすぎて涙目になりながら耳打ちする。
「っ!!」
そうすると肩を震わせて立花先生も笑い出した。
「マリモってお前…!!」
「せんせー俺を褒めてくれよ!」
「おう、褒めてやる褒めてやる」
名付け親の生徒の頭をガシガシと掻き回す立花先生。
「うわっ!セットがぐちゃぐちゃになるって!!」
立花先生はその声を聞いて更に髪を掻き回す。
「あはははは!!!」
「ぶはっ!」
「おま、ヤバ!!」
見事な鳥の巣頭の完成に、クラスメイトは次々に吹き出す。それは俺も同じで。
教室内の爆笑の嵐は、隣のクラスにまで響いたという。
「あー、SHR始めんぞー」
調子悪い奴はいねぇか、と聞く立花先生に一人が手を挙げた。
「なんだ西井」
「せんせー、腹筋が痛いでーす」
「あ、俺も俺も」
「それなら僕もー」
それに便乗する生徒が何人か同じく手を挙げる。あれだけ笑えばな。そういう俺も頬の筋肉が痛かったりもするのだけど。
「言い出したら全員だろ。席につけー」
「「「「はぁい」」」」
「此処は小学校か」
綺麗に全員がハモったことに対して、立花先生が代弁してくれた。
「連絡は、と」
案外几帳面な立花先生が手帳をペラペラ捲るのをぼんやりと眺める。今日ってKY、じゃなくてマリモに会うはめになるのだろうか。同じクラスだから仕方が無いとはいえ、避ける術はないかと考え込む。
クラスメイトも協力的であるし、とっくに自宅謹慎を終えた厳もいるので平気な気もしなくもないのだが。
「宇宙人だしな」
声に出ていたらしく、隣にいたクラスメイトが俺の肩を叩いた。
「俺らも協力するからさ」
元気出せ、と飴をもらった。
「サンキュ」
心配してくれたことに自然と頬が緩んだ。笑いすぎて筋肉痛なのはこの際気にしない。すると目の前にある顔がボンっと音を立てて真っ赤になった。
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