29 夜の逢瀬



 ふと、暗闇の中で目が覚めた。どうやら食事もせずに寝こけていたようだ。
々に暗さに慣れてきた目が時計の針を捉えた。


 「3時、か」


 思いっきり夜中だ。もう一度寝ようとしたが既に目が覚めてしまって眠れない。ただボーっとするのもどうかと思い、ベッドから起き上がった。服を着込んでそっと部屋を出る。
 廊下に出れば、寝静まっているせいか酷く静かだ。人の気配がないため、冷たく感じる雰囲気に触発されてぶるりと体を震わせた。コツコツと足音がリズムを刻む。
今、此処には自分しかいないその事実にホっと息を吐き出した。最近一人になる時間が少ないせいか、一人の空間に酷く落ち着く。何の目的もなく寮の外へと出ると、肌寒い風が吹いた。
 風に煽られるように夜空を見上げる。学園自体が山の中にあるせいか星が綺麗に見える。月も煌々と輝き自身の存在を示している。その静かな冷たい光に照らされながら、俺は彷徨うように足を進めた。
 そうして着いたのは裏庭だった。月光を反射する草花が、昼間とはまた違う雰囲気を醸し出している。ベンチに近づくと人影があった。(俺が言えることではないけれど)こんな時間に誰だろう、と考える。


「雷先輩」


 やはりというかなんというか、そこにいたのは雷先輩だった。俺が思わず呟いた声に先輩は振り向いた。


「怜那」
「どうもです」


 お互い驚きに目を瞠りながら会釈する。


「隣、良いですか?」
「ああ」


 許可をもらって俺は雷先輩の隣へと座った。


「まさか本当に来るとはな」
「?」


首を傾げる俺を横目に、雷先輩はゆるりと笑んだ。


「なんとなく、待っていたんだが」
「俺を、ですか?」
「ああ。勘が当たるものだな」


 勘…野生の勘だろうか。どこか納得出来る節があるのを否めない。口には出せないが、心中でそう呟いた。


「体、冷えていませんか?」


 こんな寒い中待っていたのなら、体は芯から冷えてしまっているだろう。そう思って聞いたのだが。

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