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『それで何があったの』
「腹を殴られて熱が出た」
『殴ったのは王道の取り巻き?』
「ああ」
『中々バイオレンスね。で、怜那』


 一段と低くなった声に「あー」と心中で呟く。


『私は何の為に格闘技を習わせたのかしら?』
「…セーサイに巻き込まれても大丈夫なように、です」
『そうよねぇ。なら何で音信不通になるまで殴られたのかしら』
「えっと」


 面倒臭いことになった。真那は怒ると昏々と尋問し、悟らせるのだ。


「もう彼らに興味が無くなってしまったから」
『あら珍しい。そこまで酷かったの?』
「あいつらは責任の重さを知らない」
『まぁ、王道よろしく仕事をサボって尻を追いかけているわけね』
「よく分かったな」


 ここまで図星をつかれると感心してしまう。たとえそれが「腐女子」の賜物だとしても。


『怜那が無関心なら仕方ないわね。許してあげる』
「ありがとう」


 許しを得たことにホっと息をつく。


『ただし、殴った王道の取り巻きたちを許す気はないわよ』
「やっぱりか」
『当然じゃない。私の怜那をキズモノにしたんだから』
「キズモノって」


 その言い方だと別の意味にとられそうだからやめてほしい。


『社会的に抹殺してあげるわ』
「ま、真那、ケリは自分でつけるから」


 電話越しであるはずなのに殺気が漏れてきて慌てて止めに入る。真那はやると言ったら本気でやる人だ。権力を使ってでも叩きのめす。普段は権力を嫌うものだから、その反動(であるのかは分からないが)で物凄いことになってしまう。滅多に使わないものだから、周りの人が応援してしまうのも原因の一つなのだが。


『えー…』
「不満そうにするなって」
『だって私の怜那を傷つけたのよ?和子もやる気だし』
「え、そこに和子もいるのか?」
『はぁーい!和子ちゃんですよん』
「本当にいるし」


 ややこしいことになった、と一人ゴチる。和子、フルネームは南屋和子。俺と同級生で幼馴染。もちろん「腐女子」だ。だが真那と同様、俺に執着してくる。ので思考回路が二人とも同じなので、二人が揃うと暴走を止めるのは不可能に近い。
 しかも和子は有名な呉服店の一人娘で権力も持っている。そのため真那と和子がタッグを組むと最強で最悪なコンビになるのだ。


『むぅ、居ちゃ駄目なの?』
「そういう訳じゃないが、」
『もーっそんなこと言ってると本気で社会的抹殺しちゃうんだからねっ』


 ん?と首を傾げる。その言い方だとまるで。

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