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「うーんとね、怜那君」
「はい」
「とりあえず骨に異常はないよ」
レントゲン写真を見る森永先生につられて俺も写真に目を向けた。
「ただ」
少し苦い顔をした森永先生が言う。
「同じところを殴られたせいか骨折ギリギリ手前の打撲の状態になってる」
「あー…」
どおりで尋常じゃなく痛むわけだ。無意識のうちに殴られた部位へと手を当てる。服の上からでもそこが熱を持っているのが分かった。
「多分一週間は熱と痛みが出ると思う」
「…長いな」
「これでもマシな方だよ。普通なら10日は長引く。けど、怜那君は鍛えてるみたいだから」
「そう言われれば筋肉あるな」
何かしているのか、と聞かれて俺は曖昧に笑う。だけれど逃してくれるほど雷先輩は優しくはなかった。
「…まあ格闘技を少し」
実はカポエラを齧っていた時期があった。カポエラというのは格闘技とダンスを合わせたようなものだ。
「へぇ」
「齧ったくらいですけどね。でも筋トレは毎日しています」
意外そうに見てくる二人に苦笑してみせる。
「治るまでは筋トレ禁止だよ」
「えー」
「駄目だから。治るものも治らないでしょう」
「大人しくしてろ」
「…はい」
こっそりやろう、と心の中で決意した。だって筋トレは一日でも怠ると筋力がすぐに落ちてしまうのだ。特に俺は筋肉がつきにくい体質だから余計に。
「一週間は絶対安静にすること。今は大丈夫みたいだけど、晩になったら熱も出るだろうし」
もうすでに熱も持ってるみたいだしね、と森永先生はゴソゴソしながら言う。湿布と薬を小さい袋に入れて持たせてくれた。
「ありがとうございます」
「錠剤は一日三回、食後に二粒飲んで。痛み止めだから飲まないと魘されるよ」
「はい」
「よし、じゃあ送ってもらって」
不吉な予告をもらった俺はテンションが下がったまま頷いた。薬忘れないようにしよう。
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