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「親衛隊の彼らに感謝することだ。本来ならそんな些細ないじめで終わる訳がない。強姦だって有り得るのにそうなっていないのは、彼らが自分で感情を制御しているからだ」
 一言に収まりきらなかったな、と考えながらゆっくりと目を閉じた。そうしていると誰かに後ろから抱きしめらる。


「ありがとう」


 ボロボロと涙を流しながら、美しい人が俺を一匹狼から離し静かに抱きしめていた。


「ありがとう、ありがとう…望月くん」


 ここにいるはずのない、いてはいけない彼に驚く俺。彼は何か吹っ切れたように微笑んでいた。


「「「「「ありがとう、望月くん」」」」」


 会長、副会長、双子会計、書記、一匹狼。それぞれの親衛隊隊長5人がそこにはいた。美しい彼は親衛隊総括のその人で。6人が全員俺を囲み涙を流しながら笑っている。
 奇妙なこの光景に驚き固まっているのは俺だけではない。編入生とその取り巻きも呆気にとられているのが目の端に映っていた。


「ねぇ、会長様」
「な、んだ」


 会長親衛隊隊長が会長に話しかける。戸惑う会長を余所に隊長は可憐な笑みを浮かべた。明らかに「作られた」それ。


「僕らは一ヶ月待ちました。生徒会のやるべき仕事もせず、そこの編入生の尻を追いかけている貴方を」


 品位を失わないまま、けれど酷いその罵りに唖然とした表情になる会長。


「副会長様。僕も待ちましたよ」


 副会長親衛隊隊長も一歩前に出る。それぞれ他の隊長も前に出た。


「皆さん、今までありがとうございました」


 総括である彼が優雅な仕草で一礼する。上げた顔には、すでに冷たい表情が張り付いていた。


「僕たちは貴方達を尊敬していました。けれど今はこの様」


 美しい彼の口から発せられる辛辣な言葉。


「失望しました。この程度だったのか、と」
「勝手に憧れて失望した僕らは駄目ですよね」
「僕らがいけなかったのです」
「見る目がありませんでした」
「すみませんでした」


 口々に発せられる言葉は、素直な故に凶器だ。自業自得ではあるのだが同情してしまう。

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