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「ふぅん」


 ぐいっと腰に手を回されて距離が急激に近くなった。


「なんですか」


 動揺を悟られまいと端正な顔立ちを睨み上げる。だが風紀委員長は俺の睨みなどものともせずどこ吹く風。理事長と同じくらい食えない人だ、と胸中で嫌みを言う。


「風紀委員長?」


 何も言わず沈黙を保つ男に訝しげな視線を送った。


「俺は皇雷だ」
「知ってますけど」
「呼べ」


 何を、と聞き返そうとして寸前で止まる。…もしかして。


「皇、先輩?」


 恐る恐る口から発せば、相手はニヤリと不敵に笑う。


「雷でいい」
「え、それはちょっと」


 親衛隊に睨まれるのは、と言外に言い含めたのだが。



「俺に親衛隊はいない。潰したからな」


 いや、そんな清清しい笑顔で言われても。どう頑張っても目の前のこの人に勝てる気がしない俺は、深く溜息をついた。


「誰もいない時だけですよ。雷先輩、離してください」


 俺が頼めば、風紀委員長もとい雷先輩は満足そうに笑った後潔く腕を外してくれた。


「あいつらが気に入る訳だ」
「あいつら?」


 聞き返す俺に、意味深な笑みを浮かべた雷先輩は何も言わないままその場を去っていった。

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