08
「じゃあよろしく」
「了解っ!」
ビシっと敬礼し元気良く返事する厳。ファンが見たら悶えそうだ。
そういえば言っていなかったが、美人中の美人である厳にはもちろん親衛隊がいる。しかも大規模な。当初、俺自身は厳に関わる気は皆無だったのだが、厳が引っ付いてきて離れなかった。当然俺は親衛隊の制裁をくらい、それを知った厳が―――キレた。
美人は怒ると怖い、と昔誰かが言ったがその通りだ。あの時俺は初めて厳の男の部分を目の当たりにした。今思い出してもかなり怖い。怒気の方向は決して俺では無かったのに、その俺でさえあんなに怖かったのだ。親衛隊の奴らは真っ青な顔で震えていた。
ハっと我に返った俺は慌てて止めに入った。「次は無い」と厳が冷たい視線を寄越したのに対し、震えながらコクコクと頷くチワワ。それ以降俺は制裁にあっていない。それどころか親衛隊の奴らと友人になった。
よくよく話を聞いていると、なんて健気なんだろうとホロリときたからだ。厳は不満そうにしていたものの、俺の好きにさせてくれた。チワワたちの話を聞き、相談に乗っていたらいつのまにか他の親衛隊の奴まで友人になっていたのだった。もちろん今も友好関係は続いているとも。
「厳ー。出来たから持っていってくれ」
「分かったわ」
にこにこと上機嫌に笑う厳は手際良くテーブルに食器やらフォークやらを並べる。
「そんじゃ」
「「いただきます」」
二人で揃って手を合わせた。フォークを手に取って今日のメインであるグラタンを口に含む。
「うん、旨い」
「美味しー!怜ちゃん天才!!」
厳がホクホクと幸せそうに食べるのを見て嬉しくなる。これがあるから料理は楽しいのだ。
この学園にはもちろん食堂(というよりも高級レストランだけれど。当然のようにウェイターもいるし)もある。あれはあれで美味しい。のだが、やっぱり俺としては庶民料理がやっぱり良い。
ということで俺は、食堂で食べるよりも格段安いし自炊することにしたのだ。弁当も自分で作っていて、それを目撃されてまたもや厳に付き纏われたのでこうして厳の分も作っている。
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