07



◇◇◇


「ただいまーっと」
「ただいまあ」


 カードキーを機器に翳(カザ)して寮部屋に入る。
 あの後、厳と二人で晩飯の食料を買い占めた。重い方を持つと言って聞かない厳に、俺が折れて重い方を持ってもらった。
 ちなみにスーパーは寮の1階で、俺の部屋は五階だ。2,3,4階はそれぞれ1年、2年、3年の部屋で、6,7階は生徒会と風紀委員の部屋だ。5階はそれぞれ各学年の成績上位5位以内の生徒の部屋になっている。 俺は特待生のため(一応学年主席だからな)5階、しかも一人部屋だ。普通の一般生徒は二人部屋だが、5階から上に住む生徒は一人部屋なのだ。
 で、その一人部屋には厳が入り浸っている。本来の二人部屋よりも広いので二人いても何ら問題はない。すでに二人部屋みたいなものだけど。


「冷蔵庫に入れとくわね」
「よろしく」


 更に驚くのは寮の部屋にはキッチンやらバスルームやらが全て備え付けられているって事実。これも小説通りなのかよ、とは思ったものの便利なことには違いないので有難く使わせてもらっている。


「今日のご飯はなぁにー?」


 風呂を洗おうと腕まくりしているとヒョコリと厳が顔を覗かせた。


「グラタン」
「本当?私グラタン大好きーっっ」


 きゃっきゃっとはしゃぐ厳はどう見ても美人なお姉さんだ。オネェ系なのは実家が女形の家系だからだろう。染み付いているというかなんというか。いざという時はやっぱり男だな、とは思うけど。


「お風呂掃除は私がするから早く作って?」
「いいのか?」
「うん!だって私が作ると爆発しちゃうし」
「あー」


 あれは苦い記憶だ。
 実はこう見えて、厳は料理が壊滅的に出来ないのだ。一年前、俺がまだ料理出来ないことを知らなかった時、野菜炒めを頼んだら言葉通り爆発したのだ。あれは大騒ぎになったな。

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