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カレシができたみたいです




 それから、オレは牛乳と砂糖を少し入れたカフェオレを、先輩はブラックを飲みながらお菓子をつまんでゲームをしたり漫画を読んだりした。頃合いを見てオレは料理にとりかかろうと腰を上げると、先輩も立ち上がった。邪魔はしないから、とニコニコと笑う彼はこうなったら譲らないことを知っているので一緒にキッチンへと向かう。
 先輩はやはり物珍しいのかキョロキョロと視線をさまよわせている。その姿が子どもっぽくてかわいい。こっそりと口角を上げながら冷蔵庫を開けた。


「何を作るの?」
「和食にします」
「和食」


 材料を取り出す。それらはすべて、先輩が来る前に準備を終えているため後は調理するだけだ。エプロンを着て、鍋やらフライパンやらを取り出して手際よく進める。先輩は宣言通り邪魔にならない絶妙な場所を陣取ってオレを眺めていた。
 邪魔ではないけれど、突き刺さる静かな視線は気になる。だが、決して居心地が悪いわけではない。むしろ一緒の空間にいることが心地良くて困る。
 先輩の傍にいることが、とても好きだ。大体は穏やかな空気が流れている。大体、というのは時々ドキっとさせられるから。それはきっとオレがこの人に恋をしているからなのだろう。男同士の友情はパーソナルスペースが狭い。距離なんか無いに等しくずかずかと入り込んで腕を回してくるのが日常だ。でもドキっとすることは皆無。それを考えると、やはり、オレはこの人がいいのだろう。


「もう少し待ってくださいね」
「うん」


 こうして穏やかにいられるということが、とても珍しいことだとオレは知っている。こういうのも、悪くない。


「お皿とかお箸、お願いします」
「わかった」


 出来た料理をお皿に盛りつけて、先輩の持ったお盆に乗せていく。今日のご飯は本当に和食。肉じゃがメインの、出汁巻とお味噌汁とそれからほうれん草の胡麻和え。炊き立てのお米は圧力鍋で炊いたので美味しいはずだ。
 いつもよりも盛り付けに気を使ったそれらはとても美味しそうに見える。2人でいただきます、と手を合わせて箸をとった。先輩はおいしいおいしいと食べてくれる。我ながら、美味しく出来た。


「いつでも嫁になれるね」
「嫁って、オレ男ですよ」
「俺は夫がいいから、嫁でいいじゃん」


 他愛もない話をクスクスと笑いあいながら話しているこの空間が、ひどく愛おしい。食べ終わった食器は先輩が洗ってくれた。あまり手際が良いとは言えないけれど、手出しするのも無粋だと思って少し離れたところから眺めていた。四苦八苦する先輩が可愛かったから、というのは秘密である。



#6
まだ続きますすみません
読了ありがとうございました!


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