※変態注意※
※変態注意※
※変態注意※
※皆逃げてー!超逃げてー!※
爽やかな風が葉を揺らしサラサラと心地よい音をたて、地上に降り注ぐ日射しは目に眩しい。
一体樹齢何年なのか想像もつかないほど逞しい大木は、その見る者を圧倒させる威厳とは裏腹に、チュンチュンと軽やかにさえずる小鳥たちの安らぎの場として身体を貸している。
その傍でリスの兄弟は大木のことなどお構い無しに無邪気に追いかけっこをし、野うさぎの番は仲睦まじく寄り添い毛繕いに精を出し、猫はうとうとと微睡みの中、鼠は猫の目の前を慎重にゆっくりゆっくり歩いている。
そんな今日にはもう数少なくなってしまったありのままの自然を保った森。
そっと顔を上へ向ければそこには雲ひとつない気持ちの良い晴天が目に入りーーーー
ーーーー穏やかな空気をぶち壊すかのように景色が揺らぎ、突然重厚な石造りの塔が現れた。
◇◆◇◆◇
唐突に姿を現した塔は一人の青年をその内部へと誘い、また唐突に姿を消し、森は元の自然を取り戻した。
まるで今起こったことなど些細なことだと言うように最初から最後まで警戒すらしない動物たちの様子を横目に、不可思議な塔へと一歩を踏み入れれば、自動的に扉は閉まり彼以外の侵入を拒みカチリと施錠された。
鍵をかけられたというのにその青年は全く気にする様子もなく、一切の感情を感じさせない目を前方へと向けた。
そこはまるでーーーー巨大な図書館だった。
360度全ての壁は一部の隙も残さず本棚となっており、その本棚の端から端まで目に入る場所には全て本が詰まっている。
少し目を凝らして背表紙を眺めて見れば、『初心者のための魔術基礎編』といった易しげな本から『禁断魔術』『死体の操り方』などという常人が目にすれば頬をひきつらせること必須なものまで、多種多様な本が勢揃いしている。
そんな一冊一冊が希少で価値のある、尚且つ『危険な』書物の群が見上げれば遥か彼方の最高部まで続いているのである。
その冊数は途方もなく、大陸最大の所蔵数を謡っている王国立図書施設でさえもお目にかかれない本があると言うのだから目眩がする。
青年も流石にこの光景には圧倒されるものがあるだろうと表情を窺えばーーーー
ーーーー思いっきり顔を輝かせていた。
先程までの冷静な青年は何処へやら、本への熱い想いが抑えきれないのかそのスラリと細い指を伸ばし、背表紙をまるで愛撫するかのようにそっと撫でた。
はあ、と熱っぽい吐息を溢し、興奮にうるんだ瞳は切なげに細められ本に触れた指に愛しそうな様子で唇を這わせている。
正直言ってドン引きである。
なまじ外見が整っているだけにかもし出される残念臭が強すぎる。
そう、この青年、 外 見 は とても整っているのだ。
日の光があまり届かない塔の内部にいるにも関わらず、キラキラと輝く髪は見事な銀色で癖などとは無縁なサラサラストレート。背中の中ほどまで伸ばしたその美しい髪を無造作に一つに縛っている。
髪と同じ銀色の長い睫毛に縁取られた切れ長な瞳は緑色で、深緑と言うよりは若葉を感じさせる新緑だ。
そのまま目線を下げるとスッと筋の通った高い鼻が目に入り、更に下げていくとうっすらと色づいた薄めの唇が現れる。
一つ一つが完成されたパーツが絶妙なバランスで真っ白と言うよりは少し灰色を垂らしたような肌に配置され、まるで誰かの手で意図的に造られたような生気が感じられない中性的な美しい顔が出来上がっている。
身長は180センチメートルほどでしなやかな、まるで女性のような、しかしよく見てみれば確かに筋肉質でゴツゴツとした男性の手足が衣類から覗く。
どこをとっても完璧。100点。いや150点。まじ美しすぎる舐めたいかじりたいむしろ標本にして飾りたいから青年ちょっと死んで。
……………はっ!
兎に角信じられないほど美しい青年が本に対して顔を赤く染めて鼻息荒く興奮しているのである。
乙女の夢ぶち壊し。
これはもう罪人。
見ているこっちが死にたい。
ああ……神よ……天は二物を与えないとは誠だったのですね……!
こ の ド 変 態
青年の姿 に涙しているとふわふわと羊皮紙が漂い目の前を通り過ぎた。
ド変態はいつの間に正気に戻ったのか再び無表情で羊皮紙を受け取ると、
「……相変わらずつれないな」
と呟き、艶やかに微笑んだ。
……ハァハァハァハry
作者「こんな筈では」