女々しい俺の恋 【23】

「…(あ)」

 口を開いたのにも関わらず空気が出るばかりで音が出ない。

 まるで声の出し方を忘れてしまったかのように…。

「ナルちゃん、本当に結婚してもいいのかな?」

 俺が声を出すよりも早く愛ちゃんがボソッと呟いた言葉に握り締めていた拳に力が入り爪が掌に食い込むのを感じた。

「な、なんで俺に聞くの?」

 俺ってこんな声だったのかと思うくらい自分が自分じゃないような感覚になっている。

「いつもナルちゃんに相談してたし…」

「ま、まぁ今まではそうだったかもしれないけど、け、結婚の話とかは俺には…何も言えないから」

「じゃあ本当にしてもいいの!?」

 愛ちゃんは急にバンッとテーブルに手を付いて身を乗り出すと俺の顔を覗きこむようにして顔を近づけた。

 一体どうしたって言うんだよ…愛ちゃんの顔はなぜか涙で目が潤んでいる。

「な、何をそんなにムキになってるの?」

 顔が近付き過ぎて気まずくなった俺は顔を逸らしながらテーブルから体を離した。

「そんなに慌てて結論出さなくてもさ、取り合えずその人と付き合ってから考えるとかすれば…」

 こういう時はきっと引き止めないといけないんだろうけど今の俺には引き止める資格なんかないよ。

 だって俺は10年くされ縁のただの友達だ。

「ナルちゃんがそれでいいって言うならそうする」

 愛ちゃんは吐き捨てるように言うと体を引いて床に座りなおした。

「何で怒ってるの?愛ちゃんどうしたの?」

 嫌な事があって感情的に大泣きする事はあってもこんな風に怒ったりする事はあんまりない。

 なのに今日の愛ちゃんは感情をそのまま俺にぶつけている気がする。

「それはこっちのセリフ…」

 怒っているような口調でそう呟く愛ちゃんは顔を上げて真っ直ぐとした強い目で俺の方を見た。

 目が合ってしまうと俺の方からは外す事が出来なくなった。

「私…この前ナルちゃんと亘くんの話聞いたの」

 心臓が大きくドクンと鳴った。

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