女々しい俺の恋 【22】
すぐに返事も出来ずに俺はグッと唇を噛んだ。
「お、俺は…愛ちゃんの様子がおかしかったから心配で…」
「そっか…」
違う…言うんだ。
今言わないともうこの先言う機会なんか二度と訪れないかもしれない…。
「ナルちゃんもなんかおかしいよ?」
おかしいよ…こんなに胸がドキドキしてるんだ自分でも訳分からないくらいなんだ。
「愛ちゃん…俺…」
勇気を出せ俺…気持ちを落ち着けるように大きく息を吸い込んだ。
「ナルちゃん…そんな格好だし取り合えず部屋にいこ?」
折角の俺の決意も愛ちゃんのその一言で簡単に打ち砕かれてしまった。
部屋に入ると何度も来ているはずなのに何だか居心地が悪くてそわそわした。
「座ったら?」
部屋の中をうろうろしている俺に声を掛けると先に腰を下ろして俺はテーブルを挟んで反対側に座った。
「それで…?」
さっきの続きを言えって?この状況でか?
「愛ちゃんの様子がおかしかったからさ…本当は何か他に言いたい事があったんじゃないかと思って」
「ナルちゃんこそ…何かあるんじゃないの?」
二人の間に気まずい沈黙が流れた。
こんなに近くにいるのに二人とも違う方を向いて目を合わせようとしない。
時計の針の音だけが聞こえる静かな部屋の中で俺の心臓の音がやけに大きく聞こえた。
こんな近くにいる愛ちゃんにも聞こえているんじゃないかと心配になるほどだ。
俺は膝の上でグッと拳を握り締めて気合を入れた。
男になれ!
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