『番外編』
初めてのバレンタイン【3】

 寂しさを紛らわすために和真のことを思い出していたかのこは余計に寂しくなり後悔した。

 それにしても和真の言っていた『わかめ酒』が気になって仕方がない。

 名前から想像するにお酒にわかめが入っているだけのような気がする、しかし和真が飲んだことのない酒がそんな簡単な物なのか不思議で仕方がない。

 実はその物とはまったく関係のない名前なのかもしれない。

 かのこの『わかめ酒』に対する興味はどんどん膨れいった。

(ちょっと調べて……)

 目の前のパソコンに手を伸ばしたけれどすぐに思いとどまった。

 調べたことを黙っていればと思っていても和真のことだからきっとすぐに見抜いてしまう、そんなことになれば初めてのバレンタインは台無しになってしまうかもしれない。

 それだけは避けなくてはいけない。

 彼氏が出来て初めてのバレンタインは絶対思い出になるような素敵な物にしたい。

 かのこはグッと我慢する。

(だけどなぁ……)

 やっぱり気になって仕方がない。

 どんな味がするんだろう、あの和真が飲んだことのないお酒なのだから幻のお酒なのかもしれない。

 どんな物か調べなくても飲んだことある人に感想を聞くくらい……。

 ふとそんなことを思いついた。

(お父さんに聞いてみようかな)

 けれどあの和真が飲んだことないようなお酒を一般人がおいそれと手を出せるわけもないだろうとすぐに諦めた。

 和真と同じような……といって思い浮かんだのは兄の真尋だったが、とてもそんなことを聞けるような相手じゃないので頭から消した。

 他には誰がいるだろう……。

 頭を散々悩ませて浮かんだ人物にかのこは思わず手を叩くとさっそくその相手にメール送るために携帯を取り出した。

(何でもっと早く思いつかなかったんだろう)

 誰に聞くよりも相応しい人物がいたことにすっかり気を良くしたかのこは鼻唄を歌いながらメールを打つと携帯を掲げてポチッと送信ボタンを押した。

「んふふ〜」

 後は返事を待つだけと満面の笑みを浮かべた。

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