『番外編』
世界最強言霊使い【6】

 一秒がまるで永遠に感じられる。

 空気が重い……自分の身体の周りだけ酸素がなくなってしまったのかすごく息苦しい。

 指先まで冷え切っていくような感覚にまるでここだけは別世界で夢でも見ているような感じだ。

「あぁ、お前が持ってたの?」

「……今、なんて?」

「コレあれだろ? 暗くてよく見えないけど……名無しのチョコについてたやつ」

 なぜ……どうして……?

 言葉の意味が分からず祐二に視線を落とすと、暗闇の中で目を凝らすようにして広げたカードを見ている。

「ゆ、祐二……どうして……」

「お前待ってる時に声掛けられたんだよ。カードに名前を書き忘れたーとかって、最初は何言ってんのか分かんなかったんだけどなー」

 もうとっくにバレていた?

 それじゃ……どうして祐二は怒ってない?

 いや怒りを通り越して呆れているだけかもしれない。

「で、何でお前が持ってんの? つーか……ボロボロになってるし」

「それは……」

 やっぱり俺が盗ったなんて思っていないから怒っていないだけなんだ。

 祐二は不思議そうにカードを眺めている。

 ここまで来たら本当のことを打ち明けないわけにはいかない、だが分かっていても頭と身体が繋がっていないみたいに思うように動かない。

 自分自身を叱咤して口を開こうとしていると、祐二がポンと手を打って顔を上げた。

「どーせアレだろ? あの子がお前好みだったから悔しかったんだろ!」

「エッ!?」

「図星かよ! つーかあんなに貰ってるくせにどんだけ欲張りなんだよ!」

 祐二は自分の推理が当たったと喜んでいたけれどそれを訂正する気にはなれなかった。

 理由は間違っているけれど、俺がやったことを祐二は分かっている。

 それならそれで構わないのかな……俺には本当の理由を打ち明ける勇気がまだない。

「本当に……ごめん」

 俺は謝って深々と頭を下げた。

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