『番外編』
世界最強言霊使い【5】

「うん、そうだね。ほんと……ごめん」

 でも喜んでばかりいられない。

 そうなってしまった原因を祐二に懺悔しなくてはいけない。

 祐二は許してくれるだろうか、許してくれなくても泣いて縋りついたら情けくらいかけてくれるだろうか。

 言ってしまった後のことをあれこれ考えれば考えるほど、覚悟はだんだん遠いものへと変わっていき口を開くことも出来ない。

「ってか、何で電気も点けてねーんだ?」

「待って!」

 突然ボソッと呟いた祐二が背中を向けて歩き出すのを慌てて引きとめた。

 これから話をするのならこのままの方が話しやすい。

 明るい場所ではとても言い出せそうもない、きっと醜い顔をしている俺の顔を祐二は見たくないだろうし俺も見せたくない。

「な、なんだよ……。急にデカイ声出すなっつーの!」

「ごめん……。それより祐二、話が……あるんだ」

「話?」

「祐二に言わなくちゃいけない……大事な話なんだ」

 もう賽は投げられた、引き返すことは出来ない。

 俺はその原因となる例のメッセージカードを取りに行くために立ち上がり、不思議そうな顔で立ち尽くしている祐二の横を通り過ぎた。

 すっかり暗闇に慣れた目で躓くことなく真っ直ぐ制服の掛かっている場所まで行き、ポケットに手を入れてまだ丸まったままの紙を取り出した。

 これで最後になるかもしれない……友達として幼なじみとして祐二が俺の部屋に来ることはもうないかもしれない。

 頭の中では最悪な展開ばかりが繰り返される。

 些細なことで挫けてしまいそうになる心を奮い立たせて振り返ると、ジッと俺を見つめている祐二の所まで真っ直ぐ歩き紙を持っている手を突き出した。

「な、何だよ……」

 殴られるとでも思ったのか祐二は両手を前に出して身構えている。

「ごめん。俺……祐二に嘘ついた」

「嘘?」

 嘘という言葉に祐二の声が警戒するように少し険しくなった。

 殴られるわけではないと分かった祐二は両手を下ろして、身長差のある俺を真っ直ぐ見上げている。

「学校で……祐二へのチョコ、頼まれた時、……本当はこれも……一緒、に」

 自分でも分かるほど不自然なほど声が震えていた。

 少しだけ手を前に突き出して握っていた手を開くと不恰好な紙の塊が手の平の上で少し転がった。

 怖くて真っ直ぐ祐二の顔を見る事が出来ない、祐二がどんな顔をしているのか分からない。

 でも手の平の上の紙の塊がすぐに自分の手から離れていったことは分かる。

 そしてすぐにカサカサという小さな音が耳に飛び込んできた。

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