『番外編』
世界最強言霊使い【3】

「なに、やってるんだ……俺は」

 まさかあんな風に自分が取り乱すとは思わなかった。

 母さんも祐二もすごく変な顔をしていた、後でなんて言い訳すればいいんだろう。

「ハァ……」

 どうしようもない自己嫌悪で気分が悪くなり、自分の部屋に入っても電気も点けずにベッドに寝転がった。

 天井を見上げていると真っ暗な闇に押し潰されそうな気がする。

 いっそのこと押し潰されてしまいたい、こんな醜い自分なんて消えてなくなってしまいたい。

 そう思った次の瞬間にはそんな情けない自分に腹が立ち、力いっぱいベッドに拳を叩きつけるとスプリングが頼りない音を立てた。

「おい」

「――――ッ」

 扉の向こうから聞こえる祐二の声。

 すぐに返事が出来ないでいると、少しして扉が開いて隙間から廊下の明かりが室内に差し込んだ。

 逆光で祐二がどんな顔をしているのか分からない。

「お前、どうしたんだよ。おばさん心配してっぞ」

「ごめん、何でもないよ。後で母さんには謝っておくから」

 部屋の入り口に立っていた祐二はゆっくりと部屋に入ってきて扉を閉めた。

 少し困惑気味の祐二の声。

 俺が答えた後も扉を背にしたまま動かない祐二は黙ったまま真っ直ぐこっちを見ている。

 いつもと少し様子が違うことに心当たりがあり過ぎてその理由を聞くことも出来なかった。

「…………何でもなく、ないだろ。ちゃんと理由を説明しろよ、俺怒ってんだぞ」

「えっ……」

 それはあまりにも突然すぎた。

 何の前触れもなく祐二の口から落とされた爆弾に全身が凍りつく。

 もうバレてたんだ……。

 いつ? いつバレた?

「どーいうことだよ」

 暗闇の中で祐二が歩み寄ってくる、視界の中で少しずつその姿がハッキリと浮かび上がる。

 体を起こした俺はその姿が大きくなるのを息を殺して見つめることしか出来なかった。

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