『番外編』
世界最強言霊使い【2】

 それがいけなかったのだろうか、祐二が真っ直ぐこっちに向かって歩いてくるのを目の端で捉えた。

 いや……もしかしたらあのことがバレてしまったのかもしれない。

 何かのきっかけであの子と祐二が顔を合わせて、それで……俺がメッセージカードを盗ってしまったがバレて……。

 耳の後ろで脈がドクドクと嫌な音を立て始めた。

「これ、母さんからな」

 すぐ側まで来た祐二は不機嫌そうに声を掛けながら持っていた袋をテーブルに置いた。

 それから同じ袋を「雅兄の分」と言って母さんに渡し、代わりに同じような大きさな袋を受け取っている。

 おばさんからのバレンタインか……。

 ようやく祐二の用件が分かってホッとした。

 良かった、まだバレていないのかもしれない。

 でも……打ち明けるにはチャンスかもしれない、少しでも早く罪の意識から逃れられるし、それに祐二もあの子のことが気に入ればあの子の想いは実るのだから……。

 その方がいい、男の俺に想われていたって祐二には迷惑なだけだろうし、可愛い女の子と付き合えた方が嬉しいだろうし。

「つーか、マジで多いよなぁ」

「そうなのよねぇ。冷蔵庫に入りきらなくてどうしようかと思ってて……祐二くんもいっぱい貰ったんでしょ?」

「俺なんて全然だって! おばさんのや母さんと琴子の合わせても十三個!」

「それでも多いじゃないの」

 いつの間に見つけたのか台所の隅においてある、チョコの入った紙袋を見つけた祐二。

 袋の中身が気になるのかしきりに覗きこんでいる。

「なんかさぁ……貴俊のって本命って感じのばっかだよなー」

「あら? 祐二くんのは違うの?」

「俺のなんて義理、義理!」

「とか言って、中には本当に祐二くんのことが好きな子からのもあるんじゃない?」

「ない、な……」

「もういいだろっ!!」

 しまった、……つい。

 祐二と母さんの会話を聞いていることに耐え切れず、思わず大きな声を出してしまった。

 誤魔化しようのない雰囲気が部屋を包んだ。

「ごめん。今は腹減ってないし後で食べるよ。祐二……おばさんにありがとうって言っておいて」

 言い訳も見つからず、俺は逃げるように部屋を出た。

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