『番外編』
君が気付かせてくれた【4】

 本カノの存在が仕事に支障があったりするのは分かっているけれど、だからといって諦めることも適当に付き合うことも出来そうにない。

 俺はあえて何も言わず目の前に座る誠さんの顔をジッと見つめた。

「マジなのか? 本気と書いてマジなのか?」

 その言葉に力強く頷いて見せた。

 自分でも分からない、どうしてこれほどまでに麻衣がいいのか。

 ホストの俺が一人の女に執着して、あんなにみっともない真似するなんて……。

 でも麻衣じゃないとダメなんだよ。

 理屈なんかじゃない、この気持ちに理由なんてつけられない。

 本当はこんな俺が麻衣のそばにいるのはどうかな……って正直ちょっとだけ思う。

 八歳年下のうえに仕事はホストの俺と普通のOLの麻衣と普通に恋愛なんて本当は難しいのかもしれない。

 これから麻衣を泣かせてしまうことがあるかもしれない、嫌われてしまうかもしれない。

 それでも、俺は……。

「どうした、陸?」

「俺、麻衣のこと離してやれないと思う」

「ハッ……何でそこまで言い切れるんだよ」

「今までの女と麻衣は……いや、並べて比べることもしたくないくらい違うんすよ。……あんなに満たされたのは初めてで、今までの何だったんだろうって。体の相性とかじゃなくて、なんか体の奥が麻衣を求めて感じてるような」

 上手く説明出来ないのが歯痒い、けれど誠さんはそういう経験があるのかハッとした顔を返して少し笑みを見せた。

「安っぽい言葉で言うと運命?」

 そんな言葉しか浮かばないのが悲しい。

 一言で片付けられるものじゃないけど本能的に麻衣は特別だと感じる。

「そこまで言うなら頑張ってみたら?」

「頑張りますよ」

 ニヤッと笑う誠さんに不敵な笑みを返した。

「じゃあ、今日は帰れ」

「誠さん? 仕事はちゃんとするんで大丈夫……」

「そんなニヤけた面で店に出せるかよ。いーから帰れ、帰れ」

 立ち上がった誠さんが俺に向かってシッシッと手を振り追い出そうとする。

 俺……そんなに浮かれてたか?

 恩人でもあり保護者でもあり兄のような存在の誠さんから突き放されたのかと思うと背筋が寒くなる。

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