『番外編』
君が気付かせてくれた【2】
きっかけは何だったのか今でもよく分からない。
同じ部活だった、俺が一年で比佐子先輩が三年の夏休み。
「うちに遊びに来ない?」
中一から見たら中三の比佐子先輩はすごく大人っぽい女性で、体つきも同級生とは比べ物にならなかった。
スラッとした肢体に目を引く膨らみ。
トラックを駆ける姿は嫌でも男からの視線を集めた。
そんな比佐子先輩からの誘いを断る理由はこれっぽちもなく、もしかしたら……と淫らな妄想を止めることは難しかった。
むしろチャンスさえあれば筆おろしさせてもらおうなんて思いながら比佐子先輩の部屋へ行った。
部屋に入ってすぐ「あぁ、これはいけるな」と思った。
家には誰も居なかったし部屋に入ってから必要以上に側にくる比佐子先輩の態度はあからさまで、俺は好奇心と本能と勢いに任せてキスをした。
「いいんすか?」
「したかったんでしょ? 私も陸くんとならいいかなぁと思うし」
少しビビってしまった俺にゴーサインを送ってくれた。
それからは夢中で初めてだったせいかコンドームを上手く着けられない、それどころか焦って挿入する時ですら比佐子先輩にリードしてもらう始末。
でも初めての時は最初から最後まで夢心地だった。
初めて挿入した時の熱さと締め付け、それに自分の手ではない物で達した快感だけは忘れられない強烈な体験だった。
(やべぇ……クセになる)
初めてゴムの中に精を吐き出してそう思った。
(これで……俺も男じゃん)
まさに一皮向けたような誇らしい気分だった。
それから比佐子先輩とは何回もした、彼女が出来てからも体だけの関係みたいのが先輩が卒業するまで続いた。
「陸ぅ……気持ちいい……」
鼻にかかるような甘え声でその時の彼女だったり、一回限りの相手だったりが耳元で囁くたびに自信に繋がった。
自分も気持ちいいし、相手のことも気持ち良くしてる。
でも比佐子先輩とした初めての時のような腰が砕けるような快感を感じることはなく、まぁこんなもんかと思ったけれど相手に不満を持つようなことはなかった。
あの頃はたった一回のセックスに意味があるかなんて考えたこともなかった。
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