『番外編』
My one and only lover.【5】
長い時間を掛けて真子の身に起こった事をようやく聞き出せた俺は愕然とした。
真子がレイプされた。
それは話を聞かなくても姿を見ただけで想像出来たが真子の口から聞くまで信じられなかった。
体を震わせながら声を絞り出す真子に俺は途中で話を止めた。
「真子……」
何か声を掛けたくても何も浮かばずに名前を呼んで抱きしめる事しか出来なかった。
震える小さな体を腕の中に抱きしめて何度も何度も背中をさする事しか出来ない自分が歯痒かった。
「……汚いから」
そう言って拒む真子をなだめてボロボロになった服を脱がせて風呂場に座らせた。
背中を丸めて座る真子の体に人肌ほどの温い湯を掛けると沁みたのか短い声を上げる。
「少し我慢してろよ?」
新品のタオルを湯で濡らした俺は血と土のついた真子の顔を拭いた。
いつもニコニコと笑いエクボの出来るふっくらした頬はもうどこにもなかった。
何度も殴られたと分かる頬は腫れ上がり唇は切れ目も腫れあがって額やこめかみに血と土がこびりついている。
(絶対ゆるさねぇ……)
真子の体を少しでも早く綺麗にしてやりたかった、傷の手当てを早くしてやりたかった。
自分は汚いと何度も呟く真子に俺は首を振って「汚くない」と何度も何度も返した。
「少し我慢……出来るか?」
少しの沈黙の後に俺の言葉の意味を理解した真子は小さく頷いた。
本当はこんな事したくなかった、もしかしたらこれは夢なのかもしれない、真子は悪い夢を見ていただけかもしれない。
俺はほんのわずかな望みを託して真子の体に手を伸ばした。
差し込んだ指をゆっくりと引き抜いた俺はその現実に目を閉じた。
「クッソォ」
悔しくて悔しくてこんな思いをさせてしまった自分が許せなくて怒りで頭がどうにかなりそうだった。
それでも自分を保てられたのは小さな嗚咽をもらす真子がそこにいたからだった。
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