『番外編』
君と溺れたい【1】
「降参する?」
「もう……陸には敵わない」
バスタブの中で俺たちは互いに顔を見合わせて小さく吹き出した。
「寒くない?」
急激に冷えていく体に俺は麻衣の体を抱きしめる、腰辺りまで減ってしまった湯を埋めるためにレバーを捻り湯を出した。
温くなった湯の中に熱めの湯が溶け込んでいく。
「してもいい?」
「ここで?」
「イヤ? 麻衣が嫌って言うなら……」
最後まで言い終わらずに麻衣の腕が俺の体を抱き寄せた。
まるで最初から一つだったように二人の体がぴったりと寄り添った。
「麻衣からキスして?」
「……大好き」
小さく呟いた麻衣が俺の首に手を回して体重を掛ける。
その心地良い重さを受け止めながら細くて柔らかい腰を抱きながら視線を合わせる。
可愛いなぁ……もう。
潤んだ瞳が甘えるように俺を誘っているけれど、きっと本人はそんなつもりはないはず。
「ね……早くして?」
触れそうな位置まで近付いた唇を誘うように囁くと麻衣の唇が開きながら重なった。
押し付けられた柔らかい唇の間から顔を出す熱い舌を絡め取る。
吐息のような喘ぎ声を漏らす麻衣の手が俺の頭をかき抱いた。
「ん……んむっ……」
浅く深く……舌を何度も絡め合いながらいつの間にか麻衣が俺に馬乗りになる。
俺の腰の辺りに腰掛け、ツンと上を向いた胸の蕾が擦れる。
今日の麻衣……ちょっとエロいなぁ。
あの時ほどではないけれど自分から求めるように体をくねらせて、熱い吐息を交わしながら忙しなく舌を動かして俺を誘う。
「体、起こして?」
「んーぅっ!」
キスを途中で中断されて不満そうに口を尖らせた。
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