『番外編』
清なる夜に【6】
だが声を掛けてもぼんやりと返事を返すだけ。
ノロノロと足を持ち上げるがそれを待つ余裕は俺にはない。
「ったく……しょうがねぇな」
少し乱暴に下着を脱がせるとかのこの膝に手を掛けて、グッと向こう側へ倒した。
濡れて赤く熟れた入り口に昂った自身を押し当てる。
すぐに中に入りたいのを少し我慢して溢れたヌメリで先端を馴染ませるとクチュクチュと音が聞こえた。
「すげぇ濡らしてやがる……」
独りごちながら腰を突き出した。
そこそこの愛撫しかしていないのにかのこのそこは何の抵抗もなく俺を受け入れる。
全部埋め込んで熱く潤んだそこがいつもと違うことに気付く。
「おい、かのこ……かのこ!」
「…………」
「…………マジかよ」
寝てやがる……。
さっきまで起きていたのに今は規則正しい寝息を立てている。
自分を包み込む胎内は熱く包んでいるがいつものような締め付けや感じている時の蠢きは感じられない。
「かのこ、おいっ……」
頬を軽く叩いて起こそうとしたが小さな声を立てて身じろぐだけだ。
俺が相手に寝落ちされるとはな……。
初めての経験にどうしていいか分からない。
「…………」
ボソボソと小さな寝言。
聞き取れた言葉に再び起こそうと思っていた手を止める。
「次は声が枯れるまで鳴かせるからな」
かのこから体を離すと眠るかのこの体に掛け布団を掛けてベッドから下りる。
枕に顔を埋めるように寝返りを打つかのこの頬にキスをする。
「さっきの言葉は起きてる時に言えよ、バカ」
「んぅ」
返事をするはずもないのにタイミングよくかのこが小さな声を漏らす。
【和真、大好きぃ】
まるで子供の告白のようなセリフの寝言が自分の胸を打つことに恥ずかしさと心地良さを感じた。
こんなクリスマスは初めてだな。
かのこのと過ごすのならこんな特別な一夜も悪くないと思えてしまう。
愛しい恋人をベッドに残し俺は昂る熱を鎮めるために浴室へと向かいながら、感じている空しさだけは必ずかのこに責任を取らせてやると一度だけ恨めしげに熟睡する恋人を振り返った。
end
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