『番外編』
My one and only lover.【4】

「真子ちゃん、見つけた。今から連れて帰るから」

 十分くらい前にテツから電話が来た。

 ようやく安心出来ると思ったのに硬いテツの声に不安はさらにひどくなった。

 部屋にジッとしているのが辛くなり始めた時、ようやく玄関の扉が開いた。

「――――ッ」

 声を掛けようとした俺は言葉を失った。

 テツに支えられて部屋に入って来た真子はずぶ濡れで泥だらけで顔はひどく腫れ上がり血の跡らしきものが見えた。

 スカートの裾には膝から出たと思われる血が付きその膝は血と土の汚れが付いている。

(ど……して……)

 まるで別人のように俯き体を小さくしている真子を見て俺は一瞬で何があったのか悟った。

「…さい、…なさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」

 真子は怯えたように俺に背を向けるとドアノブを回し始めた。

 その小さな後ろ姿はもっとひどかった。

 泥だらけの服はどんな色をしているのかも判別が出来ないほど汚れ肩まで伸びた髪はグシャグシャに絡まっている。

「真子、どうした?」

「イヤァーーッ!!!」

 振り返った真子は俺を怯えた目で見ると叫び声を上げてしゃがみ込んだ。

 ガタガタと震え頭を抱えて体を小さくしている。

(俺……のせいか?)

 自分が昼間怒ったからこんなに怯えてしまったのか?

 でもその姿を見れば原因はそれだけじゃないのは明白で俺は怯える真子に手を伸ばした。

「ごめんなさい、ごめんなさい…殴らないで…殴らないでぇ…嫌ぁぁぁっ」

 泣き叫ぶ真子を見てギュッと目を閉じた。

 こんなに真子を苦しめているのはやはり全部自分のせいだ、自分がもっと真子のそばにいてやったらこんな事にならなかったんだ。

(真子、真子……)

 俺は真子の小さな体を覆うように抱きしめた。

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