『番外編』
清なる夜に【2】

 そんな事を思っていたのは昨夜のこと。

 今は十二月二十五日、予約しておいたレストランで食事を済ませてかのこを連れて部屋に帰って来た。

 肩を抱くかのこはワインを飲みすぎたのか、頬を染めて足元がおぼつかない。

「おい、着いたぞ」

「ん〜?」

 瞼を持ち上げたかのこがトロンとした瞳を俺に向ける。

 目元赤く染めてぽやんとした顔に心拍数が上がっていくのが分かる。

「寝るなよ。まだお仕置きが残ってるだろ?」

「でもぉ……眠い……」

「誰が寝かせるかよ。とりあえず、自分で歩け」

「ん〜」

 二の腕を掴んでちゃんと立たせようとするが気のない返事しか返ってこない。

 まったく……酒が弱いなら飲まなきゃいいのにな。

 止めるのも聞かずいつもより早いピッチで飲むかのこの気持ちは想像出来る。

 食事を予約しているなんて思ってなかったから嬉しかったはず、そんな程度そこまで喜ぶかのこは今まで付き合ってきた女達とはまったく違う。

 お洒落なフレンチだが気軽な店を選んだ。

 それでもこんな店は初めてだと少し緊張した面持ちのかのこは可愛い。

 変に気取らず正直で、嬉しいことも悲しいことも顔に出る。

 きっと今日のような店じゃなくてもその辺のパスタ屋でも喜ぶに決まっている。

 安っぽい女だとは思わない、金額でしかその優劣を決めることしか出来ない女達とは違う。

「和真ぁ、プレゼント嬉しぃ……よぅ」

 酔っ払っているかのこが舌足らずな口調で呟く。

 そうやって無自覚に俺を誘うな。

 明日も仕事なのに手加減してやれねぇだろ、ほんとお前は俺を煽るのが上手いよな。

 俺はかのこを抱き上げると大股で寝室へと向かった。

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