『番外編』
My one and only lover.【3】

 心配そうなテツの顔を見て俺が頷くとテツもようやく安心したように笑顔を見せた。

「どこにいる? 今から迎えに行く」

 無事だと分かったけれど早く顔が見たかった。

 外は雨が降っているのにこんな時間まで何をしていたのかも気になる。

 少しでも早く真子に会いたかった。

「ううん。大丈夫」

 少しの沈黙の後に聞こえて来た真子の声に違和感を感じた。

(いつもと声の感じが違う……)

 ただ漠然とそう感じた。

 どこが違うとか難しい事は分からなかったけれどなぜか嫌な胸騒ぎがした。

「真子? 何かあったのか?」

 小さな雑音さえも聞こえなくなった電話にひどく嫌な感じがする。

(真子……?)

 もう一度呼びかけようとすると電話は切れてしまった。

「雅樹、どうした? 真子ちゃんどこにいるって?」

「分かんねぇ……でもアイツになんかあったかもしんねぇ!」

 バイクのキーを掴むとそのまま玄関へ走った。

「待てって! お前は部屋にいろって! 俺が行くから、また電話掛かって来るかもしれねぇだろっ! お前は待ってろ!」

 テツはそう言うと俺を玄関から突き飛ばして部屋を出て行った。

 テツのバイクのエンジン音はすごい勢いで離れていく。

「真子……クソッ!」

 くだらない事でケンカしてしまった自分に腹が立った。

 周りがどんなに俺の事を白い目で見ても真子だけはいつでも側にいてくれる。

 きっと言いたい事はたくさんあるはずなのに何も言わずにいつも笑って弁当を作ってくれた。

 あんな風に怒ったのだって初めてで俺は真子にひどい事をしてきたんだとようやく気付けたのに真子に何かあったら……。

 そう考えたら背筋が凍りついたように震えすぐにその考えを打ち消した。

 電話の様子がおかしかったのは俺とケンカしたから動揺しててきっと俺が怒ってないか確認するために掛けて来ただけだ。

 不安になる自分に何度も何度も言い聞かせた。

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