『番外編』
ネコミミver.black【5】
「わ、悪かったよ……」
さすがに悪いと思った祐二は殊勝にも素直に謝った。
布団の上で食べるなという禁を犯しただけでなくゲームをしながら食べるなという禁も同時に犯している。
そういうことには特にうるさい貴俊が怒っているのは明白で、これ以上怒らせてはマズイと本能的に感じ取っていた。
「ダメだよ。お仕置きが必要だね」
「あ、謝ってんだろっ! もう絶対しねぇって」
「もう何度も聞いたよ? それにペットの躾の責任はご主人様にあるから俺が責任もって躾け直してあげるよ」
貴俊はそう言うと祐二の首の鈴をチリリンと鳴らした。
祐二は顔を引き攣らせて後ずさりを始める。
だがそれを許す貴俊ではなく掴んでいた祐二の左手を引き寄せた。
「誰がペットだっ……お前なんか怖くねぇんだからなっ!」
瞳を吊り上げ声を荒げて威嚇しているが及び腰の祐二の姿はまるで勝ち目のない勝負に挑もうとする子猫のよう。
そんなことで怯むはずもない貴俊は祐二の左手の人差し指を口に含んだ。
生温かくヌメッとした感触に祐二はビクッとして手を引っ込めようとしたが、ガッチリと掴んだ貴俊の手はビクともしない。
「ん……やっぱりしょっぱいね」
指を舐めた貴俊がボソッと呟く。
もちろんポテトチップスを摘まんでいた指は塩だらけになっている。
塩を舐め取るように貴俊の舌は何度も何度も執拗に祐二の指を這い、その舌の動きはそのためだけに動いているわけじゃないことは祐二に伝わっている。
「や、止めろよっ……」
すっかり毒気を抜かれた祐二の声には少しだけ甘さを含み始めている。
抵抗しようと強張らせていた体からも力が抜けて熱を帯び始めていた。
「んぅっ……」
貴俊の舌を指を伝い普段触れられない指の間を突付くように舐めると祐二は甘い声を零した。
思わず出てしまった嬌声に祐二は慌てて口元を手で押さえた。
「これじゃお仕置きにもならないね」
「いだっ!」
貴俊は指に歯を立てると顔を顰めた祐二が短く呻いた。
指を強く噛みながら貴俊の舌は指先を弄るように動いている。
痛みと同時に与えられる弱いが痺れるような快感に祐二の体の熱は中心に集まりつつあった。
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