『番外編』
ネコミミver.black【4】
「んー……」
祐二はぼんやりと目を開けた。
オレンジ色の柔らかい光だが開いたばかりの瞳にはそれすらも眩しくて一度目を閉じてからゆっくりと瞼を持ち上げた。
「起きたの?」
自分の隣に並ぶように座っている貴俊と見える景色にそこが自分の部屋じゃないとようやく思い出す。
貴俊は読んでいた本を閉じると傍らに置き、寝ぼけ顔の祐二の髪を撫でると祐二はまるで猫のように気持ち良さそうに目を閉じている。
ゴソゴソと布団の中から体を起こした祐二はボンヤリとしていた瞳をカッと開いた。
「何で服着てねぇんだよっ!」
「暖房付いてるから寒くないでしょ?」
「そうじゃねぇだろっ!」
確かに部屋は暖かく肌を晒していても寒さを感じない。
けれど問題はそこではなくいつの間に自分が全裸になっているかということだった。
服だけでなく下着まで脱がされている自分の肌を毛布が暖かく包み込んでいるが、祐二は慌てたように自分の服を探した。
部屋を見渡して自分の着ていた服がダウンジャケットの隣に掛けられているのを見てベッドから出ようとしたがすぐに思いとどまる。
「おい、服取れよっ」
「ジーンズだと寝にくいっていつも言うのは祐二だよ?」
確かにいつもそう言い貴俊の部屋に泊まる時には置いてあるスウェットをパジャマとして着る。
いつもは言わなくても用意されているスウェットがどこにもないことに祐二はすぐに気が付いた。
「パジャマ! 早く出せ――」
首をグルグルと動かして部屋を見ていた祐二は声を荒げていたが違和感に気付いて口を噤んだ。
チリチリと小さな音がする。
その音は聞き覚えがあり自分の記憶が正しければ数時間前に聞いたばかりの音だった。
祐二は恐る恐るといった感じで首に手を伸ばした。
指先に冷たい物が触れるとチリッと小さな音を立てた。
「お、お前まさか……」
今度は両手を頭の上に伸ばしソッと手の平を頭へと下ろしていく。
手の平に感じるフワフワとした感触を今度は指で掴んではっきりとその正体を確認する。
「何着けてんだよっ!」
再び着けられた猫耳に祐二は烈火のごとく怒りだしそれを毟り取ろうとしたが寸でのところで貴俊に阻まれた。
貴俊は祐二の両手を掴んでにっこりと微笑む。
「悪い子には躾が必要だね」
「お、俺が何をしたっ」
「布団の上でお菓子を食べないって約束したのを忘れた?」
貴俊の言葉に祐二の表情が変わる。
何度も言われていてつい先日もゲームをしながらクッキーを食べていた祐二はボロボロと布団の上にクズを落として怒られたばかりだった。
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