『番外編』
ネコミミver.white【7】
「なんだよ、コレェッ!!」
先に声を上げたのは陸の方だった。
白いふさふさした物が麻衣の太ももを撫でるように動いている。
しかもその白いふさふさした物は自分の後方から伸びている事に気が付いた陸が今度は言葉を失った。
「も、もしかして……これって……」
体を起こした麻衣が陸の後ろを覗き見る。
驚きのあまり呼吸すらも忘れてしまったかのように微動だにしない陸に構うことなく覗き込んだ麻衣は目に飛び込んできた物を見て目を疑った。
陸の尾骨の辺りから生えているそれは長さが五十センチ弱でまるで意思でも持ったように動いている。
「尻尾……だよね」
「ど、どうして……」
この現実が受け入れられない陸はベッドに手を付いてがっくりとうな垂れる。
それに合わせるように尻尾もシュンと落ち込むように元気をなくした。
「ねぇ……陸、触っていい?」
「…………」
動揺のあまり返事も出来ない陸に構わず麻衣はソッと手を伸ばした。
まずは指先で触れ柔らかい毛の感触を確認してから今度は手の平で包み込むように握る。
「嘘……だろ?」
「どうしたの?」
柔らかい毛の感触を手の平で楽しみながら尻尾を撫でていた麻衣は驚愕の陸の声に手を止めた。
顔を上げた陸は複雑な表情で麻衣の顔を見つめた。
「触られてんのが分かる……」
「え……じゃあ私の耳と一緒?」
「た、多分……」
自信なさそうに陸が返事を返す。
二人は困ったように互いの体に出来た物を見つめた。
「俺……夢見てんだな」
「陸?」
「猫耳付けた麻衣がめちゃめちゃ可愛かったから夢にまで出て来たんだよ。うん、そうだ」
「で、でも……」
「だってそうだろ? 麻衣ならまだしも俺にこんな白いふさふさ……夢に決まってる!」
(でもそう思うには無理があると思う……)
麻衣は思ったが口に出さなかった、これが夢だと思わなきゃやっていられない。
麻衣には耳、陸には尻尾。
この状況を受け入れるために二人は夢の中だと自分自身に言い聞かせた。
「夢の中ってことで……たまには動物っぽくいこうかなぁ」
陸は膝立ちになるとペロッと唇を舐めた。
それはまるで舌なめずりする牡猫のようにも見えた麻衣は自らが牝猫にでもなったようにゴクリと喉を鳴らした。
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