『番外編』
2011☆SUMMER31

 呑み込まされた貴俊のそれは、指3本で慣らされていても、奥まで呑み込むまでに時間が掛かった。

「苦しい?」

 苦痛を和らげようとしてくれているのか、キスの雨を降らす貴俊が聞いた。

「へ……っき」

 苦しいといえば苦しい、でもそれは痛みを伴うものではなく、狭い場所を押し広げられる圧迫感のみだ。

(お前の方が苦しそうだっての)

 呼吸を荒くさせ、貴俊が短く息を吐いて、時々辛そうに眉根を寄せる。

「く……っ、すご……い」

 奥へ到達した状態のまま、動かなかった貴俊は、わずかに腰を引いたと思ったらすぐに顔を顰めた。

「俺も……一回、達っておけば良かった」

 もう出ちゃいそうと言って笑う顔は、いつもの余裕はなさそうで、何だかそれが可笑しくて仕方ない。

「じゃあ、出しちまえよ。そしたら早く終わるしなー」

 中に埋められたまま動かされないせいか、少しずつ楽になってきた。

 無理すんなと笑って貴俊の肩を叩くと、珍しく子供みたいなムッとした顔を見せた。

「今日の祐二はズルイ」

「はあ? 何がだよ」

 唇を尖らせてそんなことを言ったかと思えば、すぐに雄の顔になって体を密着させた。

「声、我慢できなかったら、俺の肩噛んでてね」

「何言っ……っっ」

 耳元に甘い声を囁いたすぐ後、ようやく馴染んだ貴俊を引き抜かれ、今度は打ち付けるように奥に押し込まれた。

(な……っ、メチャメチャすんなよっ)

 箍が外れてしまったように、貴俊の腰が容赦なく叩きつけられる。

 声が出ないように唇を噛んでも、大きく身体を揺さぶられると、堪えていられなくなった。

「貴俊、貴……俊っ」

 縋るように貴俊の首に抱き着いて、ベッドの上で踏ん張っていた足を腰に巻き付けた。

「ん……っ、いいよ。噛んでて」
 
 ぶら下がるように抱き着いた祐二の身体に、貴俊は腕を回して頭を自分の肩へと導いた。

(あ……しょっぱい)

 汗で濡れる肩に歯を立てると、声を上げることは我慢できた。

 部屋の中にはベッドの軋む音と、繋がった場所が立てる粘つく音、それに媚薬のように甘く名前を呼ぶ貴俊の声だけになった。

(やばい……また、俺……先に……)

 一回も出していない貴俊より先に達くわけにいかない、変なプライドに貴俊が激しく出入りする入口に力が入った。

「ゆっ……じ、そんな締めない……でっ」

 呻いても動きを止めない貴俊に、気持ちいい場所を何度も擦り上げられて、額から伝う汗と目尻から伝う涙がこめかみを濡らす。

「ごめ……っ、もう出していい?」

 いつもならこの状態が永遠かと思うほど続き、その間に何度も達かされてしまうのに、今夜は貴俊が先に根を上げた。

 祐二は噛んでいた歯を外し、血が滲んでしまった肌に気付かずに、貴俊の顔が見たくて枕に頭を落とした。

[*前] | [次#]


コメントを書く * しおりを挟む

[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -