『番外編』
2011☆SUMMER29

 セックスはこんなに気持ちいいものだったけ。

 抱かれながらぼんやりとそんなこと考える。

 貴俊と付き合うようになって、貴俊に抱かれるようになって、自分が抱く側から抱かれる側になって、初めてそう感じるようになった。

 過去に付き合った彼女との少ない経験を思い出しては、自分がここまで彼女を気持ち良くさせられたのか自信がない。

「祐二」

 他所事を考えていたのがバレたのか、貴俊が顔を上げたかと思うと、痛いほど張り詰めた自身を強く扱かれた。

「ああっ」

(達くっ)

 出口を求める奔流の熱さに目を閉じた瞬間、口を開けていた出口を貴俊の指に塞がれた。

「貴……ッ!!」

「ダメだよ。何か違うこと考えてたでしょ」

「違……っ」

 考えていたのは、どうして貴俊とするセックスは気持ちいいのかというのことなのに、当の本人は静かに怒っている。

「何が違うの?」

「だから……っ、イッッ」

 指先を先端に押し込まれて、快感を上回る痛みに息が詰まった。

(貴俊の、ばかやろう)

 貴俊としている時は、頭の中は貴俊以外のことなんて考えるわけがない、そうさせているのは貴俊のくせに、どうしてそんなことも分からないのか。

「バカ、アホ……ッ」

「祐、二……?」

 力の入らない身体を肘で支えて、上半身をわずかに起こした。

 涙の浮かぶ瞳が、目の前の貴俊の顔をぼやけて見せる。

「お前のこと、以外……考える余裕なんて、ねぇよ!! いっ……から、早く!!」

「……祐二」

 ぼやけてハッキリしない視界の中で、貴俊が感極まったように顔を緩ませたような気がした。

 確かめようと目を開いたけれど、望み通り与えられた快感に身体がベッドに落ちた。

「いい……っ、いい、も……っ」

 丸みを帯びた先端を口に含まれ、舌全体で舐められたかと思うとすぐに強く吸われ、そうしている間も敏感な裏筋を指が擦り上げ、その下の柔らかい袋を揉まれる。

「あ、ああああ……っ」

 一気に訪れた快感に、散々高められていた身体はあっけなく絶頂を迎えた。

 ようやく出すことを許され、塞き止められていた白濁は、勢いをつけて貴俊の口へと飛び出していく。

「はあ、はあ、はあ……っ」

 最後の一滴まで指で扱き出された。

 意識が飛びそうなほどの強い快感の後、一気に引く波のような感覚の中で、肩で息をしていた祐二は、顔を上げた貴俊をぼんやりと目で追った。

(……あ)

 見るつもりはなかったのに、見てしまったのは男らしい貴俊の喉が上下した瞬間だった。

 その動きが意味することが分かって、恥ずかしいのに目を逸らせずにいると、汚れた唇を指で拭う貴俊と目が合った。

 視線を合わせたまま、貴俊はTシャツを脱いだ。

 暗闇の中に浮かんだ、細いのに鍛えられた上半身は、同じ男なら自分も手に入れたいと思うものだ。

 祐二もただ細いだけの自分の身体と比べ、当然ながら劣等感を抱いていたけれど、今は劣等感より先に欲情させられてしまう。

 露わになった上半身、汗で張り付いた前髪をかき上げる細い指、動くたびに浮き上がるバランスの取れた筋肉。

 あの腕が力強く自分を抱き、細いのに男らしい指に声が枯れるほど喘がされ、穏やかな瞳を欲に染め、視線で身体中を愛撫される。

 体躯の差はもう縮まることはあまり期待していないけれど、これ以上夢中にさせられないために、差が広がらないようにと祈るしかない。

「今度はこっちで達かせてあげるね」

 貴俊に見惚れている間に、丁寧に舐めて濡らした指が足の間に伸びていた。


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