『番外編』
2011☆SUMMER25

 意識しないようにと思えば思うほど、伸びた髪が気になってしまう。

 祐二は正直困っていた。

(やばい、こんなの絶対やばいって)

 貴俊のことを好きなのは、もうこの際認めたとしても、こんな風に女みたいにドキドキしてしまうのは何かが違う。

 祐二がそんなことをグルグル考えているとも気付かずに、貴俊は伸びた前髪を指で引っ張っている。

「んーやっぱり切ろうかな。今行くと中途半端だなぁと思ってたんだけど、たしかに前髪が邪魔だなと思うんだよね」

 そう言って貴俊は伸びた前髪を手でかき上げる。

(な……っ)

 かき上げられた髪、露わになった男らしい額、そしてぱさりと落ちた前髪。

 ありえないのに、祐二の目にはその仕草がスローモーションに映った。

(もう、やだ)

 鼓動が跳ね上がり、じわじわ熱くなっていたはずの身体が、火が点いたように熱くなった。

 祐二は堪らずベッドに顔を押し付けた。

(こんなの俺じゃない。俺じゃない。俺じゃない!!)

 同じ男を見てカッコいいと思うだなんて、それもその気持ちが性欲に直結してしまうだなんて、とても受け入れがたい事実。

 どれだけ否定しようとしても、若い自分の身体は何よりも正直だった。

「祐二、どうしたの?」

 顔を完全に伏せた祐二には、貴俊の声しか届かなかったが、同時に首筋を指で触れられて返事より早く声が出た。

「あ……んっ」

 風呂上りのせいなのか、いつもより熱い指先に触れられ、祐二の口からは自分でも驚くほど甘い声が漏れた。

(ウソだ!!)

 慌てて口を押さえたけれどもう遅かった。

「祐二」

 貴俊の声色が変わり、熱い肌が触れると同時にベッドがギシリと音を立てるた。

「祐二?」

 耳のすぐそばで声がして、熱っぽい吐息が吹き込まれた。

(や……っ、信じらんねぇ!! なんで勃ってくるんだよ)

 うつ伏せになっているおかげで、その事実はまだ自分だけしか気付いていない。

 何としても貴俊には知られたくないと思うのに、身体を重ねてきた貴俊の手は、隙間がないはずのベッドと身体の間に入り込んで来る。

「や、やだ……っ」
 何もされていないのに、半分ほど勃ち上がった自身に気付かれるわけにはいかず、祐二は慌てて貴俊の手を掴んだ。

「祐二……離して?」

「……ッ」

 吐息が耳に掛かり、甘く蕩けそうな声を吹き込まれ、さらに唇が耳を柔く食んだ。

 自分で触っても何も感じないはずの耳が、貴俊に触れられるだけで、信じられないほど敏感な性感帯へと変わる。

 貴俊の薄くて冷たい唇に何度も食まれ、冷たかったはずの唇が、自分と同じように熱くなる頃には、祐二は貴俊の手を止めておくことは出来なくなっていた。

 力の入らなくなった手を優しく解き、貴俊の手がタンクトップの裾から入り込む。

「く……っ」

 ベッドにうつ伏せになっていて、身動きの取れない貴俊の指が、風呂上りのさらりとした肌をくすぐる。

 大きく動けない分、指先が細かく動くたびに、快感とは少し違うくすぐったさに腰が揺れた。

「や、め……っ」

 まるでその時を待っていたかのように、祐二の腰が揺れた瞬間を狙って、貴俊の手がハーフパンツの中へと滑り込んできた。

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