『番外編』
ネコミミver.white【1】

「うぅ……寒かったなぁ」

「すぐに熱いお茶入れるね。買って来たお饅頭食べる? それとも……お腹空いてるなら軽く何か食べる?」

「んー意外に腹は膨れてるからいいや」

 玄関でブーツを脱ぐ麻衣の体を支える陸はニット帽を取りクシャクシャと髪の中に空気を入れる。

 二人は夕方から、とある集まりに揃って顔を出した。

 意外に早く(?)散会したおかげでデパートで買い物を済ませて早めにマンションに帰って来る事が出来た。

「ほっぺ冷たい」

 麻衣の両頬を手で挟む陸は軽く擦りながら暖めると麻衣の首に巻いてあったマフラーを取った。

 チリン。

 軽やかな鈴の音がする。

「可愛い。よく似合うよ」

 白いリボンに付いた三センチほどの鈴を指で揺らすとブーツを脱ぎ終わった麻衣が不満そうな顔で陸を見上げた。

「もう取っていい?」

「なんで? いいじゃん。こっちも……可愛いし」

 ニンマリする陸が麻衣のニット帽を取るとその中から白い猫耳がぴょこんと顔を出す。

 おふざけで付けた猫耳のカチューシャと鈴のチョーカー。

「俺しかいないからいいでしょ?」

「…………お風呂に入るまでだからね?」

「はーーーい」

 ネコ仕様の麻衣をえらく気に入った陸はご機嫌で返事を返すと足取りも軽やかに部屋へ上がっていく。

 その後ろ姿にため息をつきながら麻衣は玄関の姿見に自分の姿を映す。

(どうしていつもコスプレ……)

 そういえば去年のクリスマスはサンタ、少し前のハロウィンは小悪魔、そしてネコミミ……。

 陸と付き合うようになってからある意味別の世界を体験している麻衣はこれ以上エスカレートしなければいいけれど……と不安になる。

「麻衣ー! 早くおいでー」

「はぁい」

 陸の声に返事をするとスリッパを履いてリビングへ向かう。

 パタパタとスリッパの音に交じってチリチリと鈴が音を立てると麻衣は小さくため息をつくしかなかった。

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