『番外編』
Another one62
愛しいという気持ちが、言葉よりも饒舌に唇と指先から伝わってくる。
「陸……んっ」
胸に触れていた唇と舌が、ゆっくりと下りていき、柔らかい脇腹をくすぐった。
「や……っ、ん……くすぐったい」
「くすぐったいだけ？」
柔らかく歯を立てられた途端、腰の辺りからゾクゾクとした快感が全身に駆け巡っていく。
（身体が熱い……）
まるで雲の上にいるように身体がフワフワして、飛んで行ってしまいそうだけれど、陸の唇と指に甘く繋ぎ留められていた。
「ねぇ、陸」
名前を呼びながら、茶色い髪に指を伸ばした。
あの頃と変わらない髪を指先に絡めて、ジッと出来ない太ももを擦り合わせた。
「我慢出来ないの？」
クスクスと笑う陸の手が太ももに伸び、最後に残った一枚を弄ぶ。
「意地悪……」
言い掛けたけれど、口を噤んで言葉を直した。
「焦らされたら、私……」
そこまで言い掛けた唇に、陸の指を重ねられて遮られた。
顔を上げた陸の瞳の色が変わった。
大きく打った胸の鼓動に、息をするのも忘れてしまいそうになった。
「焦らす？ そんな余裕があるように見える？」
「り……陸っ」
優しかった手が急に乱暴になったかと思うと、噛みつかれるような乱暴なキスと一緒に、下着の中に手を入れられた。
自分だけが気付いていた、下着の中で溢れる蜜を指で掬われる。
小さくても自分の耳に届いたやらしい音と、弄る指の動きで残っていた理性のベールが一気に剥がされた。
「ん……っ」
「すごい。もう……こんなに、濡れてる」
指が一番敏感な部分に触れると、それだけで堪らなくなって腰が跳ねてしまう。
頭の中がとろとろに溶けて、蕩けた意識の中で、息を乱した陸の声が響く。
「ごめんね。久しぶりだから、ほんとは……もっと、ゆっくりって思ってたけど、こんなに感じてる麻衣見てたら、無理っ」
下着を乱暴に脱がした陸が、足を大きく割って身体を滑り込ませてくる。
ぼやける視界の中で、瞳を動かすといつの間にか裸になっている陸が、手を伸ばして帰り道に寄ったコンビニの袋に手を伸ばしていた。
（あ……そっか、そういうことだったんだ）
落ち着かない様子でコンビニに寄った陸を思い出してようやく納得がいった。
小さな包みを取り出して、カサカサと音がして、口元を手で覆って息を吐いた。
（緊張？ ううん、違う。これは……）
落ち着かず、そわそわする気持ちの原因が何なのか、気が付いてしまうと余計に落ち着かなくなった。
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