『番外編』
Another one61

 タイツがつま先から抜け、素肌に陸の手が触れる。

「やばいな、これ……」

 独り言のような小さな呟きの後、二人を覆っていた掛け布団がいきなり剥がされた。

 不意打ちの眩しい光に、思わず目を閉じたけれど、すぐに自分の格好を思い出した。

「陸! で、電気……消して!」

 部屋の明るい光の下に、堂々と自分の身体を晒せるほど、自信のあるスタイルではないし理性も残っていた。

「やだ。全部見たいもん」

「お……願いだから、恥ずかしくて死んじゃいそう」

 久しぶりに抱き合うから余計にそう思う。

 あの頃よりスタイルが良くなっていれば別だけれど、そういう自覚はまったくないのだから仕方ない。

 精一杯の努力をして陸の視線から自分の身体を隠そうとして、横を向いたままジッと目を閉じていると、身体の上から陸の気配が消えた。

 陸がベッドから下りて離れていく音を耳で追いかけていると、目を閉じていても明るかった瞼の向こうが暗くなった。

(あ、消してくれたんだ)

 ホッとしてそろりと目を開けると、部屋の中は完全な暗闇ではなく、ほんのりとした明るさが残っている。

「麻衣が死んじゃったら困るから」

 戻って来た陸は笑いながらそう言うと、ジャージのズボンを脱いでベッドへと上がってきた。

 陸の身体が腰の辺りに触れた。

(陸の……もう、すごく熱い)

 下着越しでも分かるほど、しっかりと勃ち上がったものを、ゆっくりと腰に押し付けられた。

「こっち、取ってもいい?」

 黙って頷くと、背中を撫でていた手にホックを外されたけれど、胸元を押さえている手が邪魔をした。

「麻ー衣」

 いい加減諦めて、と耳元で囁かれてようやく力を緩めた手から下着がするりと抜けた。

 好きな人と抱き合うことはとても幸せを感じられるけれど、同じくらいの恥ずかしさも感じてしまう。

 ある時点を越えてしまえば、その恥ずかしさは消えて、気持ちのまま相手を求めることが出来るけれど、今はまだ少しだけ理性が勝っている。

 恥ずかしくて自分からは伸ばせてない指、理性という最後の砦のせいで強張る身体。

 その一つ一つは陸の手に触れられるたび、陸の唇が触れるたび、解かれていった。

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