『番外編』
Lovers' quarrel【8】
「……陸?」
「まだ……嫌?」
麻衣に呼び掛けられてハッとしながら頬に手を添えたまま上を向かせた。
睫に涙の後を残しながら麻衣の顔が優しく微笑んだ。
「嫌、じゃない」
「キスするよ?」
「ん……」
ゆっくりと目を閉じた麻衣の唇にようやく触れることが出来た。
温かくて柔らかい唇の感触を確かめるように何度も軽く触れながら頬にあった手を髪に差し込んで柔らかい髪を指に絡めながら顔を傾けた。
(もっと欲しい……)
触れるだけのキスじゃ我慢出来なくて開いた唇の間から出した舌で麻衣の唇を舐めると閉じていた唇が開きすぐに舌と舌が触れた。
クチュと音を立てて二人の舌が絡む。
もう止められなかった。
角度を付けて重ね合わせ深く絡まる舌にここが外だという事も忘れ俺は夢中で麻衣の舌を吸った。
「はぁ……っ、麻衣……」
キスが長くなればなるほど唇を離そうとする麻衣を捕まえて何度も何度も深いキスをする。
二人の唇が腫れぼったくなるほど激しいキスを交わしようやく唇を離した頃には二人とも息が上がっていた。
「ね……麻衣、我慢出来ない……いい?」
昂った股間を麻衣に押し付けながらスカートの上のから膨らみを撫でた。
熱っぽい息を吐き麻衣の耳を甘噛みしながら今すぐ欲しいと麻衣を求める。
「今はダメ……それに……」
「それに?」
困ったような顔をする麻衣に続きを促すように腰に回した手を撫でる。
「さっきから携帯、鳴ってるよ?」
麻衣の視線は俺の携帯が入った上着のポケットに向けられる。
それと同時に携帯が震え何回目になるか分からない着信を告げた。
いいとこなのに……。
ムードぶち壊しの電話だったが麻衣に気付かれたら出ないわけにもいかず渋々ボタンを押した。
「さっさと戻って来いっ!」
鼓膜が破れるんじゃないかと思うほど大きな怒鳴り声は誠さんから。
もちろんその声はそばにいた麻衣の耳にもしっかりと届いたらしく苦笑いを浮かべている。
結局、その後店に戻った俺はこってりと絞られた。
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