『番外編』
Lovers' quarrel【4】
「ヤダッ! 離してよっ!」
夜の街で言い争う姿はかなり目立つ。
すぐに麻衣に追いついたが抵抗する麻衣を近くの公園へと連れて行った。
「麻衣、見てたの?」
まだ興奮している麻衣を宥める余裕もなく陸は話を切り出した。
怒っているのか掴んでいる俺の手を乱暴に振り回しながら麻衣が俺を睨みつける。
「見てたんじゃなくて見えたの! あんな風に店の前でキスしてたら見たくなくても見えますからっ!」
「キスしてたんじゃなくて、あれは無理矢理されたんだって」
「その割にはしっかり抱きしめてたじゃないっ、この腕でっ!」
麻衣は振り回す手を一瞬だけ止めて上に掲げてからまた振り解こうと大きく揺らし始める。
あまりに乱暴に振り回す麻衣にさすがにこれ以上は麻衣の腕がどうにかなってしまうんじゃないかと麻衣の手を離した。
「だから、それは……」
「ホストだからキスくらい仕方がないんでしょ?」
乱れた服を直しながら麻衣が呆れたような声で口を開く。
俺も乱れた服を直していたが麻衣の言った言葉にカチンときた。
「何、その言い方……」
「ホストだもんね。お客さんがキスしたいって言ったらするんでしょ?」
「だからさぁ……したんじゃなくてされたって言ってるだろっ!」
「嫌なら避ければいいじゃないっ! それじゃあ陸はお客さんに押し倒されたら仕方なくエッチするの? それもされたから仕方がないっていうの??」
興奮しているせいか麻衣の話は一気に飛躍した。
(あぁ……もうっ)
イライラしながら髪の毛を乱暴にかいた。
スーツのポケットの中ではさっきからひっきりなしに電話が掛かっているらしくブルブルと振動だけが伝わっている。
きっと指名客を待たせているから店からに決まっている。
すぐに戻らないといけないのは分かっていても麻衣をこのまま放ってはおけない。
さっき離したばかりの麻衣の手を掴むと乱暴に麻衣の体を引き寄せてキスをしようと顔を近づけた。
「イヤッ!!!」
拒んだ麻衣が俺の体を突き飛ばした。
力いっぱい突き飛ばしたのか俺は二、三歩後ろに下がりながら倒れそうになるのを何とか踏みとどまることが出来た。
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