『番外編』
本当は前からがいいんだけど…以下略【和真×かのこ】

「もう、ダメ……」

 かのこは弱々しく頭を振るとガックリと首を折った。

 けれど後ろから伸びた手が顎を支え持ち上げるとさっきまでのように正面を向かされる。

「ちゃんと見てろ」

 耳元で囁かれる低い声に身体から力が抜けていく、かのこは震える足で濡れる床を辛うじて捉えながら涙目で鏡越しの人物を見つめる。

 濡れた髪が額に掛かり毛先からまだ雫が滴っている。

 数時間前までのダークスーツにオールバックという姿からは想像出来ない、色香を漂わせる和真の身体はかのこ同様何も纏わずぴったりと寄り添っていた。

 立ち上る湯気の熱気だけではなく背中から伝わる熱にかのこの身体は溶けてしまいそうだ。

「熱いな」

 口数の少ない和真が呟いた。

 左手はかのこの顎を支えたままだが、右手はさっきから変わらず足の間へと伸びていた。

「ンッ……」

 かのこは身体を震わせ声を押し殺し目を閉じた。

「何度も言わせるな」

 その言葉でかのこがノロノロと瞼を持ち上げる。

 濡れた瞳が鋭い自分の瞳を探すように頼りなく泳ぐのを捉えながら右手を離した。

 その途端にかのこの身体がホッとしたように弛緩するのを感じ取りながら和真は右手をかのこの膝裏へと当てた。

「あぁっ……やっ……」

「こんなに濡らしてるくせによく言うぜ」

 片足立ちになりバランスを崩したかのこの身体が前のめりになる。

 だがあくまで顔を下げさせようとしない和真の左手にかのこの体を支えようと力が入った。

「目を閉じるな。見てろ」

 閉じようとする瞼に釘を刺しつつ和真は膝を曲げて腰を揺する。

 腰を揺らすたび何度も達したかのこの身体から溢れ出していた雫が和真の硬くなった自身を濡らしていく。

 湯気の充満している浴室にも関わらず曇り知らずの大きな鏡はその様子をハッキリと映し出していた。

「さっき洗ったばかりなのにな?」

 そうさせたのが自分だと分かっていながら敢えて口にする。

 恥ずかしくなるほど濡らしていることに自覚しているかのこの身体は羞恥で震え熱を帯びさらに新しい雫で和真を濡らす。

「もう……許してっ……」

「挿れて欲しいのか?」

「ち、違っ……こんなのヤダッ……ちゃんとベッドで……」

「ベッドはお前がたっぷり濡らしたせいで使い物にならないよな?」

「…………ッ」

 先ほどまで散々啼かされていた身体から流れた雫のせいで大きなベッドはぐっしょりと濡れている。

 絶頂を迎えたかのこの体を抱え綺麗に洗い上げた和真は再び啼かせようと大きな鏡の前でかのこの羞恥を何度も煽った。

「後ろからでも感じるだろ?」

「…………」

「俺の目を見てろ、一瞬でも逸らしたらまたお仕置きだ」

 その言葉に身体を熱くしたかのこの瞳は突き上げられる瞬間、たった今言われた言葉も忘れてしまったかのように瞼が下りた。

 和真はクッと小さく笑い腰を引く。

「そんなにされたいのか?」

 意地悪に囁いた和真の言葉に答える声は言葉にならず、ただ甘い喘ぎ声だけが狭い浴室に反響するだけだった。


end
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