2010、夏祭り:-one-11


 すすり泣くような麻衣の喘ぎ声は耳のすぐ横、柔らかい身体の重みはより抱いていると感じられる。

「麻衣……っ」

「気持ち、いい……っ。ああっ」

 肉と肉が擦れ合う音と、汗ばむ肌と肌がぶつかり合う音、それから二人の激しい息づかいが寝室を満たす。

「陸……ぅっ、あぁっ、ああ……っ」

「ん……いいっ、麻衣の中、すごいっ」

 柔らかいのに締め付ける、特に入り口の締め付けに我慢が利かなくなりそうになる。

「やば……っ、も……達き、そ……」

「いい……よ。達って……」

 根を上げそうになった陸は優しく促されても首を横に振って耐えた。

 今すぐ出したら気持ちがいいことは間違いないのに、こんな時に男の変なプライドばかりが邪魔をする。

 激しく腰を突き上げ、掴んだ麻衣の腰を引き寄せる、速さの分だけ快感が加速度的に膨れ上がる。

「やっ、陸……! ま、……て。あ、ああ……っ」

「だ……ぁめ、このまま達って」

 打ち付けるたびに太ももを濡らすものが多くなると、麻衣の声が切羽詰まったように途切れ途切れになった。

「だめ、だめ……っ! ああっ!」

「麻衣っ! クッ……」

 今夜二回目になる強い締め付けに、麻衣の中に入っていた分身が弾けた。

「は……っ、ああ……」

 腰を二度三度と突き上げて、陸はばたりと脱力して手足を投げ出した。

「はあ、はぁ……っ。ん……っ、あ……すごい気持ち良かった」

 肩で息をする陸は身体の上で同じように呼吸を乱す麻衣の髪を撫でる。

 汗で張り付いた髪をかき上げて、顔を伸ばしてこめかみにキスをすると、麻衣も同じように陸の前髪をかき上げ額にキスをした。

「また、お風呂、入らないと……ね」

「今度は一緒に入っ……」

「入りません」

 今度こそと口にした願いはあっけなく遮られたけれど、見下ろす麻衣の瞳が幸せそうに笑うから、まあいいかと思ってしまう。

「あーあ、日曜日なんてあっという間だなー。もっと麻衣とイチャイチャしたいのに」

「ふふ……また来週。来週は新しく出来た自然食レストランに連れてってくれるんでしょ?

「バイキングのお店だっけ」

「そっ! 有機野菜中心でヘルシーで……、ってなんでニヤニヤしてるの?」

「いや……野菜ばかりでヘルシーでも、食べ過ぎたら意味な……イタッ!」

「もうっ! 先にお風呂入るからね!」

 額をぺちんと叩いて立ち上がる麻衣、余韻もなく身体の中からずるり抜け落ちる。

 パジャマに袖を通す麻衣を横目で見ながら、ティッシュに手を伸ばしながら言う。

「早くしないと、俺も入っちゃうからね」

 麻衣は振り返るとベッと舌を出して部屋を出て行った。

 幸せな一日が今日も終わりを告げようとしている。

 また来週、そう言って笑った麻衣の言葉を思い返すことになるなんて、この時は思いもしなかった。

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