2010、夏祭り:意地悪な恋25


 一体どこへ電話したのか聞いても教えてもらえなかった。

「来るまで暇だし、もう一回やっておくか」

「…………」

 無言の非難を返すと和真は冗談だと笑っていい、それからタバコに火を点けて空を見上げた。

「花火は日本で見る方が綺麗だな」

「アメリカでも花火大会あるの?」

「イベントがある時に上がる。独立記念日の時はわりと派手だな」

 独立記念日って何だっけ……という疑問は飲み込んだ。

 口にしたらきっとバカにされる。

「へぇ……見てみたいなぁ」

「そうだな。機会があれば行くか」

「ち、違……ごめんなさい。そういう意味じゃなくて」

 素直な感想だったけれど、ねだっていると思われたのかもしれないと慌てて否定すると、視線を下ろした和真が笑った。

「そういう意味でいい。結局、今日だってこうやって来てるしな。お前が一人で行くことは計算外だったがな」

「もしかして……最初から一緒に来てくれるつもりだったの?」

「一緒に行きたかったんだろ?」

 和真は短くなったタバコを携帯灰皿の中に押し込んで顔を上げてしまった。

 そうだ、和真はこういう人だった、すごく意地悪なくせに本当は優しい人。

「ニューヨークかぁ、テレビとか映画でしか見たことないや」

「クリスマスのシーズンもいいぞ。間違いなくお前好みだ」

「大きなクリスマスツリー! スケートリンクとかあるんだよね!」

「俺は滑らないからな。お前だけ滑れよ。転んで頭打ってそれ以上バカになってもいいならな」

「ひどいっ! これでも結構滑れるんですよーだ」

 夏の夜空に咲く大輪の花を見上げながら、季節はずれなクリスマスの話に花を咲かせる。

 和真と二人並んで「いつか」の話をする、それは叶うか叶わないか分からないような話だけれど、この先も一緒にいてくれるという約束をくれているようで嬉しかった。

 そんな他愛もない話をポツリポツリとしながら、二人きりで花火を見ているとしばらくして和真の携帯が鳴った。

「ようやく着いたか」

 電話を取り出しながら呟いた和真の言葉に首を傾げた。

 着いたって……誰が? それとも何が?

 まさか……服のデリバリー、とか?

 ありえないとすぐに否定したけれど、和真ならどんなことでもしそうと否定を取り消す。

「で、どこにいる?」

 和真の口調がくだけている、それが余計に電話の相手が誰なのか想像を大きくさせた。

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