2010、夏祭り:意地悪な恋18
下着に手を掛けて脱ごうとしたかのこが和真の声に動きを止めた。
「待て」
「なに?」
止められたことに安堵はなく、今度は何を言われるのか、そればかりが気になった。
「脱ぎにくいだろ。裾を捲くった方がいいんじゃないか?」
「そ、そんなことない……大丈夫」
「捲くれ」
「で、でも……」
「ああ……捲くるより脱いだ方が早いか、捲くるのが嫌なら脱ぐか?」
顎に手を当ててまるで独り言のように呟いた和真が近付いて帯に手を掛けた。
「ま、捲くるからっ!」
和真の手を押し止めたかのこはもう一度だけ窺うような視線を和真に向けたが、表情の変わらない和真に諦めたように裾に手を伸ばした。
和真に見られながら肌を晒していく、何度も見られていると分かっていても、この場所と浴衣という二つの要因が羞恥を煽る。
なんでだろう、寒くなんてないのにゾクゾクする。
太ももに風が当たるのを感じて思わず手を止めると、和真の咎めるような視線が向けられてかのこは覚悟を決めた。
普通なら絶対に屋外で晒されることのない場所が外気に触れ、寒さからではない肌の粟立ちに目を閉じて裾を帯に挟み込んだ。
「これで終わりじゃないだろう? まだ残ってる」
許してもらえるとは思っていなかったけれど、先を急かされて言葉を返したくなったけれど、この状況で気の利いた言葉が浮かぶはずもなかった。
下着に手を掛けて、いよいよ肌を覆っていた頼りない最後の一枚も取り去った。
「そんな泣きそうな顔をするなよ。もっと泣かせたくなるだろうが」
誰もいないとはいえ腰から下を何も付けてない状態、かのこは前屈みになり太ももを擦り合わせた。
恥ずかしいのに熱い、熱くて堪らないのにゾクゾクする、震える唇から零れる熱い吐息は、かのこから少しずつ思考を奪っていった。
「足を開け。……もっとだ」
ああ……また中から熱いものが溢れてくる。
肩幅まで足を開かされたかのこは自分の身体の変化に声を震わせた。
「和真……変、私……おかしい」
「何が?」
「恥……ずかしいのに、ドキドキする。こんなに……」
「そうだな。こんな場所でこんな格好をしているのに、こんなに濡らしてる」
「ああっ」
和真の指がぬかるみに伸び、水遊びをしているかのように音を立てた。
「やらしい身体だな」
「ご、ごめん……なさ、い」
責められているような気がして謝れば、和真は気にしているそぶりも見せず、さらに指を奥へと進められた。
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