2010、夏祭り:意地悪な恋16
ジッパーを引き下ろしただけでは、大きくなった和真自身を引き出すことは出来ず、承諾も取らずベルトに手を伸ばした。
「や……っ、取れない」
ベルトを外すことに手間取るかのこは自分が発した声の甘さに驚愕した。
媚びるように甘えた声、鏡を見なくても今の自分がどんな顔をしているのか想像がつく。
カチャカチャと音ばかりで外れないベルトに、細くて長い和真の指が伸びるとかのこは顔を上げた。
「どこでそんな技を身に付けた?」
低く笑いながら事もなげにベルトを外した和真は、指をさらに下ろしてかのこの唇に触れると指先で唇を割った。
「あ……っ」
強引に割って入って来る和真の指を追い出すことは出来ず、むしろ歓迎するようにかのこは舌を伸ばす。
「まさか俺以外の男にも同じようにしたことがあるのか?」
「ひ……ない、れったい、ない」
指を口に突っ込まれたまま激しく首を横に振ると、和真は指を抜いて優しい仕草で唇を拭った。
ひどいことをされている自覚はある、でも気付いてしまっている。
こんな風にされて身体は喜びを感じていて、反発していたはずの気持ちもいつの間にか消え、和真にすべてを支配されることに心地良さを覚え始めていた。
「ああ、分かってる。お前に男を教えたのも、ここを使って男を喜ばせることを教えたのも、俺だからな。俺以外の男を喜ばせられるわけがない。かのこ、お前は俺のモノだ」
「私は……和真の、もの?」
「そうだ。それから俺のすべても、かのこ……お前のモノだ」
「和真も……私の、もの?」
それじゃあ、目の前にあるこれも……と思って手で触れた途端、わずかに残っていた理性や道徳は吹き飛んでしまった。
和真に出会うまでは知らなかった世界、もっと綺麗で尊いと思っていた世界、和真は誰も触れることのなかった世界を、一瞬で和真の色に染め上げてしまった。
冷静になればそれが異常なものだという自覚はあるし、人に言えないような恥ずかしい行為だと分かっていても、和真の声や指や舌が鍵になって二人だけの世界の扉を開けると、それらは意味を持たなくなる。
「いい子だな」
完全ではないものの硬く勃ち上がった昂ぶりの先端に舌で触れ、すっかり馴染んだ味を確認してから口を開いて咥えると、和真の手が優しく髪を撫でた。
まるで誉められて喜ぶ素直な子供、もっと誉めて欲しくてさらに深く呑みこむ。
「ん、ぐっ……」
自分が思っていたよりも深く喉を圧迫され、思わず嘔吐くと、和真が顔に手を添えて腰を引いてくれたのかが分かった。
「喉まで咥えなくていい。舌先を尖らせて……そうだ、上手いな」
先端の割れ目に這わせた舌先に伝わる苦味、わずかだけれど弾んだ和真の声、感じてくれていることで舌の動きは大胆になっていく。
触れるたびに形を変えていく昂ぶりはとても熱くて硬くて、口に入りきらないほど大きくなった。
咥えきれない部分を舌で丁寧に舐め、先端から体液が滲み始めると今度は浅く咥え、顔を前後に動かして、口の届かない部分は手で包んだ。
「は……っ、は……」
かのこの動きに合わせるように腰を揺らし、息を弾ませる和真は綺麗に結ってあったかのこ髪に手を入れた。
髪の毛を掻き回されたことに気付いたけれど、触れている和真の手の熱さにそんなことどうでも良くなった。
「和真……気持ち、いい?」
自分が舐めてベトベトにした昂ぶりを手で扱きながら上目遣いで問いかけると、和真は小さく舌打ちをして腕を掴んだ。
「きゃっ!」
引っ張られるまま無理矢理立たされ、ふらついたかのこは和真の胸に倒れ込んだ。
「ワザとやっているとしたら興醒めだが、お前の場合ありえないからな」
「な……に?」
「気持ちいい、と思っているかどうか分からないわけじゃないだろう?」
「だ、……て」
感じてくれていることは分かるけれど、やっぱり和真の口から聞かせて欲しい。
「だから……お前にも同じ事をしてやる」
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