2010、夏祭り:君の隣26


 乱暴にしそうと貴俊が口にした通り、いつになく激しく揺さぶられて祐二はしがみつくことも出来なくなっていた。

 激しい中にも貴俊はこれ以上ないほど優しい仕草で祐二の唇をあやし、空いている手は感じるすべての場所を愛撫した。

(ま、また……出るっ)

「…………ッ」

 息苦しさに声にならない喘ぎ声と共に萎えることの知らない自身から精が放たれる。

 朦朧とする頭の中でこれが何度目だったか、数えることも出来なくなっていた祐二は、かすむ視界の中に常にある貴俊の顔ばかりを見上げていた。

 長く一緒にいても貴俊が必死になっている場面に遭遇したことは数えるほどしかない、でも今の貴俊は額から汗を滴らせ、短距離走よりも息を乱している。

「祐…二、だけ……だよ」

「ん……う、うんっ」

「祐二がいればいい。祐二だけがいてくれたら、他に何もいらないからっ」

 祐二は本当にそうだったらいいのにと思った。

 二人以外誰も居ない世界ならきっと自分は素直になれるような気がする。

 誰かの目を気にすることなく、誰かの評価を耳にして落ち込むこともない、劣等感のない純粋な恋心だけのある世界。

「ゆっ……、俺……も、そろそろっ」

 ボンヤリと貴俊の言葉に想いを馳せていた祐二は切羽詰った貴俊の声と速くなる突き上げの間隔に考えることを止めた。

現実に今は二人だけしかいないのだ。

 自分の好きな相手も自分のことを好きで、その相手に全身全霊で抱かれている。

「祐……っ、祐二祐二」

「ンアッ……ンゥッ、出……出るぅ」

「待って、俺もっ……一緒に達きたいから、そこで待っててっ!」

 簡単に絶頂へと押し上げられた祐二は放つ寸前で強く握られ阻まれると短い悲鳴を上げた。

 出口を塞き止められて快感だけが身体の内側で膨れ上がる。

「もっやだっ、貴……、離して! 離してっ、苦し……ッ、離してぇっ」

「祐……っ、も……こしっ!」

 頂上から下ろされることない快感がもたらす苦しさは、今までにないほど祐二を苦しめ、頭を左右に大きく振った。

 眦に浮かんだ涙がこめかみへと落ち、貴俊にしがみついていた手は血が滲むほど肩に食い込んでいる。

「も……や、だっ!」

「祐二、祐二ッ!!」

 力強く奥深くまで押し入って来る貴俊の身体が震えると、激しい奔流が身体の奥に流れ込んで来た。

(ああ……っ)

 内側を満たしていく貴俊の熱い精を感じた瞬間、塞き止めていた手が離れて祐二は体を弓なりにして達した。

 腰から力が抜けていくのを感じながら、身体が急に重く頭の中が真っ白になっていく。

 祐二は意識を手放す寸前、貴俊の言葉を聞いた。

「たとえ祐二が俺のことを嫌いになったとしても、俺は祐二が好きだよ。何があってもそれだけは変わらない」

 思いつめたような貴俊の声に「くだらないことばかり言うな」と言い返そうとしたけれどそれは言葉にはならなかった。

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