2010、夏祭り:君の隣19
お互いに見知った身体なのに、改めて向き合うことの恥ずかしさを祐二は知った。
脱衣所の明かりはすりガラス越しでも十分に視界を確保している。
少し温めに設定されたシャワーが降り注ぐ中で貴俊と向かい合わせに立った祐二は、これ以上視線に晒されることが我慢出来ず自分から貴俊の背中に腕を回した。
「祐二、そんなに強く抱き着かれたら何にも出来ないよ」
頭の上から聞こえてくる貴俊の声は、内容に反して嬉しそうに聞こえる。
(わ……かってるっつーの!)
だからしているのだと心の中で呟いてから、少しだけ腕から力を抜いた。
「シャワーの温度、平気?」
祐二が頷いて返すと貴俊はシャワーヘッドに手を伸ばし、ゆっくりと優しい手つきで祐二の体にシャワーをかけていく。
汗を流すように念入りに掛けられるシャワーが心地良く、祐二は流しやすいようにと身体を少し離して目を閉じた。
「髪も濡らす?」
「ん」
「少し、顔上げて?」
言われるままに顔を上げた祐二はシャワーを顔面で受け止め、顔を洗うように両手で顔をこすってから、今度は髪を濡らされると髪を洗うように髪の毛を乱暴にかき回した。
たっぷりかいた汗が流れていくようで、シャンプーを使わなくても十分さっぱりする。
「……祐二」
「じゃあ、次はお前なー」
身体がさっぱりすると気持ちもすっきりしたのかもしれない、濡れた顔を手の平で拭いシャワーヘッドを受け取ろうと祐二は目を開けた。
(あ……っ、やばい……)
受け取ろうと思っていたシャワーヘッドはいつの間にか定位置に戻り止まっている。代わりに近づいてくるのは貴俊の顔。
「俺は後でいいよ。どうせ……今から汗掻くし」
「でもっ――んぅっ」
あっという間に唇が奪い取られて、すぐに熱い舌が中へと入り込んで来た。
さっきよりも性急な貴俊の舌に、ついていくことの出来ない祐二は苦しそうに喘ぐ。
触れるだけで溶かされてしまいそうなほど熱い貴俊の舌は、驚くほど器用に舌を撫で執拗に絡め取ろうとする。
(やばいって……こんなんじゃ、すぐに……)
玄関でのキスですでに火の点いていた祐二の身体は、あっけないほど早く身体の中心に熱を集め始めた。
唇だけでなく身体も奪おうとするみたいに、貴俊の腕が強く抱きしめようとすると、祐二は貴俊の胸に手を置いて押し返す。
すでに硬くなり始めている自身が貴俊に触れることで、キスだけで感じ始めていることを知られてしまうのが嫌だった。
いつ終わるか分からない激しいキスに応えながら、身体の距離を置こうとする祐二の頑張りも空しく、背中に回されていた貴俊の手が不意に腰を撫でる。
「待っ……」
「もう、勃ってるね」
「やっ……んぅっ」
腰をするりと撫でた貴俊の手はあっという間に二人の身体の間に滑り込むと、天を向き始めていた祐二の昂ぶりを包み込んだ。
(気持ちいい)
同じ男だからなのか、それとも貴俊だからなのか、貴俊の手で触れられるのは自分が触れるよりも数倍気持ちが良い。
細く長い指が芯を持ち形を変えようとしている自身に巻きつき、敏感な先端は計算されているかのように手の平で擦られる。
「んっ、あ……っ」
「すごいね。すごい熱くなってるよ」
「う……っるせぇ!」
簡単に欲情してしまう身体だと言われているようで、恥ずかしくなった祐二が怒鳴り返すと強く腰を引き寄せられた。
(熱……い、貴俊も……もう?)
下腹部に押し付けられた硬く熱いものに、祐二は貴俊の顔を見上げた。
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