2010、夏祭り:-one-ラブモード4


 麻衣は心のどこかでこうなることを分かっていたし、自分も同じように陸が欲しくなっていることを隠してはおけなかった。

 手の平に包んだ陸の分身をゆっくりと扱きながら、見下ろす陸の唇だけじゃなく、鼻先や顎に何度もキスをした。

「麻ー衣、俺の理性を試してるの?」

「試してない、って言ったら?」

「もちろん、襲う」

 そう言って笑った陸は後部座席に手を伸ばした。

 積んである荷物を探っているのか、ごそごそという音に麻衣は身体を捩って振り返る。

「何、探してるの?」

「何って、これからすることに必要なもの」

 暗闇の中で探しているものが何かすぐに分かった。

 麻衣はシートの上で身体の向きを変えうつ伏せになると、同じように後部座席の荷物に手を伸ばして探り始めた。

 後部座席には陸が実家に着くまでに美紀が用意した荷物がたくさん積んであり、その中には二人分の洋服が入った紙袋もある。

 夏祭りの後、実家には寄らずそのまま帰ることを予想していたらしい。

「服と一緒に財布も置いてたから、確かこの辺にあると思うんだけど……」

 陸が服の入った紙袋を探し当てたらしく紙袋が音を立てた。

 すぐに見つからないらしく、大きな音ばかり立てる紙袋に、麻衣はあることを思いついた。

「シートを倒せば……」

 シートの横に手を伸ばしてレバーを触ると、二人分の体重が掛かっているせいなのか、シートは勢いよく倒れてしまった。

「うわぁっ!」

 片手で身体を支えていた陸が声を上げて圧し掛かってきた。

「ごめんっ、麻衣」

「大丈夫。それより、これなら探せそう?」

 慌てて身体を起こそうとした陸は身体を跨いだまま動かなくなった。

「陸?」

「もう……このまましちゃう」

「え、待って……」

 倒れたシートは狭いけれど、身体をぴったり重ねられている。

 思いがけない展開に身体の向きを変えようとすると、陸の手が乱暴に浴衣の裾をたくし上げた。

「今日は大丈夫だよね」

 確信を持って言った陸の言葉は間違っていない。

 一緒に暮らすようになって陸は体のサイクルを把握していて、すべてがその為というわけじゃないことは、普段の気遣いから分かっている。

 浴衣を捲くられて露わになった太ももを隠すため、後ろ手で裾を戻そうとするより早く、陸に腰を持ち上げられた。

「ま、待って……本当にするの?」

「それはどっちの意味? ここで、それともナマでするってこと? でもね、どっちもイエスだよ」

 耳のすぐ近くで陸が喉を鳴らしたのが分かった。

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