『いつかの夏へ』
9
どれだけ心が立ち止まっていても季節は流れた。
私は高校を卒業して短大に入って卒業した。
何度も季節が通り過ぎていくうちにてっちゃんとも疎遠になり会う事はなくなった。
雅樹からの連絡は一度もなかった。
もしかしたら連絡があっても両親が繋げてくれてないのかもしれないと掛かってきた電話はすべて自分が取る事もした。
それでも雅樹からの連絡は一度もなかった。
時間は人の心を癒すものだと思っていた。
けれど私は癒されたのではなくその想いを心の奥深くに閉じ込める方法を見つけ出した。
思い出せば涙が出て切なくなる。
その度に涙を堪え雅樹との思い出をさらに奥へとしまい込んだ。
あれから何度目かの夏が過ぎ私は初めて雅樹以外の人と付き合った。
優しい人だった。
私の事を好きだと言ってくれた。
私もこの人なら好きになれるかもしれないと歩み寄る決意をした。
でも無理だった。
触れられる事を体が拒み偽りの恋はあっという間に終わりを告げた。
まだ子供だったあの頃
愛なんて分からなかった
一緒にいたいだけだった
だから気付かなかった
彼を愛していた事にさえ
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