『いつかの夏へ』
7
夏が終わって私の恋も終わった。
全てを失った私はもう何も出来なかった。
あの日雅樹のアパートへ行って気が付いた時には自分のベッドの上だった。
何日も何日も起き上がる事はなく天井を見つめていた。
体はすごく重くて疲れているのに夜になっても眠る事も出来なかった。
そしてしばらくして私は入院させられた。
言葉も発せず食べ物も口にしない娘に両親は悲痛な表情を浮かべていた。
「…それで担任がね!…真子?聞いてるー?」
毎日のように幼馴染みの夏がお見舞いに来た。
違う学校に通う夏は毎日学校であった話を一時間ほど聞かせて帰って行った。
私は表情も変えずただ外を見ているだけだった。
そういう日が何日も続いた。
「真子っ!しっかりしなよっ!!」
入院してかなり経った頃いつものように話をしていた夏が突然怒り出した。
「そんなんじゃ雅樹くんに嫌われちゃうよ!!」
怒りに体を震わせている。
(何言ってるんだろう…雅樹はもう居ないのに…)
「雅樹くん…今の真子見たらがっかりするよ!」
私はゆっくりと夏の顔を見た。
目に涙を浮かべて私に訴えかけている。
「戻ってくるって言ったんでしょ!!絶対真子んとこ戻ってくるって言ったんでしょ!」
夏の頬に涙が伝った。
「…な、つ?」
あれから初めて声が出た。
夏が私の体を力いっぱい抱きしめて声を上げて泣いている。
「真子!きっと会えるから!だから信じて頑張ろっ!絶対絶対会えるからっ!!」
「あ…あぁぁっ…あぁーーーっ!!」
私は声が枯れるまで泣いた。
熱い涙が次から次へと頬を伝って私は生きているんだと実感した。
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