『いつかの夏へ』
4

 あの強い瞳には勝てなくて止められなかった。
 でも…止めなくちゃいけなかったんだ。


 部屋の真ん中で膝を抱えて座っていた。

 雅樹は必ず戻ってくるそう私に約束して出て行った。

 でも雅樹が部屋を出てから何時間経ってもバイクの音が聞こえなかった。


 陽が落ちて部屋の中は真っ暗になった。



 それでも電気を付けずにただジッと玄関のドアを見つめて待ち続けた。

 キィ―

「雅樹っ!」

 玄関が開いて私は駆け寄った。



 けれど玄関から姿を現したのは両親の姿だった。

「真子…帰るぞ」

 お父さんが私の腕を掴む。


「嫌ッ…約束したの。雅樹が戻ってくるまで待ってるって約束したの」

 お父さんの顔が曇って私から目を逸らす。

(やだ…何その顔…)

 隣にいるお母さんの顔を見るとお母さんも目を逸らした。

「何…何…何なの!?」

 私はお父さんの体を揺すった。

 厳しい顔をしたお父さんが重い口を開いた。

「アイツは警察だ」

「ど、どうして…」

「人を殴って大怪我させたらしい…まぁ相手の人は幸い命に別状はないらしいがな…」

 やっぱり止めなくちゃ行けなかったんだ。

 私がもっとちゃんと止めていればこんな事にならなかったんだ。

「私、警察行って来るっ」

 お父さんの手を振り払って部屋を飛び出した。

「待ちなさい!」

 腕を掴まれても振りほどいて行こうとする私をお父さんは頬を平手で打った。

「いい加減にしなさいっ!これで分かっただろう、アイツとはもう関わるんじゃない!」

「違うの…違うの…雅樹が悪いんじゃないのぉ…私の為に…私のせいなのぉぉ」

「家に帰るぞ」

 お父さんは私を引きずるように歩き出した。

「離して!雅樹のとこに行かせてぇぇ!!私が…私がぁ…」

 私はアパートの階段を下りた所で意識を失った。

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