『いつかの夏へ』
3

「短い間でしたけどお世話になりました」

 最後のバイトを終えて頭を下げる。

 いつもは雅樹がバイトが終わる頃迎えに来てくれていた。

 けれど今日は姿が見えなかった。

(すぐに謝りにいこう…)

 バイトをしながら自分の方が悪かったと反省した。

 すぐに会いに行って謝るつもりだった許してくれなくても何度も謝るつもりでいた。

「真子ちゃん、お疲れ。俺も今上がったところだから送っていこうか?」

 二歳年上で大学生の今井さんに声を掛けられた。

 優しい笑顔がとても素敵な人だった。

「いいんですか?お願いします!」

 少しでも早く雅樹に会いに行きたくてすぐにお願いした。

「真子ちゃんがバイト辞めちゃうなんて残念だったよ」

 冷房の効いた車内はとても居心地が良かった。

 今井さんはバイト中、不慣れな私を何度も助けてくれた。

 一人っ子だった私はまるでお兄さんが出来たみたいでとても嬉しかった。

「あれっ?」

 見慣れた景色が通り過ぎて私は振り返った。

「今井さん…今の所右じゃないですか?」

 バイクの後ろに乗っていて道はしっかり覚えている。

 雅樹の家の方へ行くには通り過ぎた信号を右に曲がらないといけないはずだが車は直進を続けていた。

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