『いつかの夏へ』
1
夏休みに入ると生活は一変した。
昼間は近所のスーパーへバイトに行って夜になると雅樹が私を連れて走りに出掛ける。
親には何度も不良娘と怒鳴られて時には叩かれた事もあった。
それでも私は毎晩のように雅樹の後ろで風を切って走るあの瞬間を味わっていた。
いつも空き地へ。
みんなが雅樹に挨拶をする。
雅樹の彼女の私にも知らない人が頭を下げる。
それだけが私には場違いみたいで居心地が悪かった。
でも雅樹やてっちゃんがいつもそばにいてくれたりそこへ来ていた女の子と少し仲良くなったりして少しずつ楽しむ事を覚えていった。
「真子さぁ〜〜ん」
私よりも若い…中学生くらいの男の子が近寄ってきた。
顔は見た事あったけど名前は知らなかった。
ヘラヘラと笑っているけれど足元がおぼつかない。
よく見ると目の焦点が合っていない。
「俺ぇ〜真子さんのこと可愛いなぁって思ってたんすよぉ」
(やだ…何この人…)
恐怖を感じて慌てて雅樹達の姿を探した。
暗い上に人が多くすぐには見つからない。
「雅樹さんの彼女だって聞いてすっごいショックでぇ〜〜へへへ」
私は少しずつ後ずさりした。
「雅樹さんとはもうやったんすか?次俺とかどーっすかぁ…ヒヒ…」
(やだっ…怖いっ…)
後ずさっているうちにかなりみんなの輪から外れている事に気が付いた。
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